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web拍手ログ その1
03.手放した未来





「どうしました、ルーク。今日はやけに積極的ですね。」



「んー?気のせいじゃね?」




ベッドの上で本を読んでいたジェイドを後ろから抱き締めているルークは、気だるそうにジェイドの背中に頬を当てる。心臓の音が聞こえないかと耳を澄ますが、残念なことに聞こえてこない。やはり前からでないとダメか。でも、ジェイドの邪魔するのやだな。ルークは先程とは逆の頬を背中に当て、今度は溜息を吐いた。




「構ってほしいんですか?」



「んー・・・。」



「私の背中で溜息を吐くとは、いい度胸じゃないですか。」




パタン、としおりを挟む間もなく閉じられた本はベッドサイドに置かれ、ジェイドはルークの手を引きはがして身体を回転させた。離れた事に不安を覚えたが、ジェイドに抱きしめられた事によりその感情はすぐに消えていく。




「まったく。どうしたんですか?」




そっと抱きしめてくるジェイドの胸に顔を埋めれば、微かに心音が聞こえる。少し、速い。




「寂しいんだ。」




私ならここにいますよ。さらに強く抱きしめられる。苦しさはない筈なのに、どこかが苦しい。病気だろうか。




「俺、ジェイドがそばに居てくれるなら、他はもう何も望まない。」




口説いてます?と聞けば、うん、と小さく頷いた。その声は、哀しみを含んでいた。




「何を今更。私は貴方のそばにずっといますよ。ああ、でもそうなったら貴方は、マルクトに嫁がなければいけなくなりますね。そうしたら、貴方を私専属の秘書にしましょう。」



「それいいな。」




一つ。




「でも俺、ちゃんと仕事できるかな。お茶くみくらいは頑張るけど。」



「私が一から十まで全て教えますよ。お茶をかけられては困りますからね。」



「だ、だから、頑張るって!」



「貴方は頑張ろうとすればするほど空回りするタイプですからねぇ。」



「うぅ…。」




また一つ。




「楽しみですね。貴方がマルクトの軍服を着る日が来るのが。」



「俺も、楽しみだ。」




私達は夢を見た。未来には成り得ない、夢を。








手放した未来。

(それでも、貴方と過ごす夢を見るくらいは許されるよね。)









2008/11/22 ゆきがた







お題:ユグドラシル

君を巣食う10のお題



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