金色(ナタリアとラルゴ)
■ラルゴの最期。メリルとナタリア。
最期に願わせて欲しい。
どうか、少女に幸福が訪れますよう。
「ラルゴ。武器を収めませんか。」
そう言った少女の瞳は、悲しみに震えていた。全てを悟ったことをその揺れる瞳から感じ取った。唇を噛締め、しかし、こちらを確りと見る。ふわりと揺れる金色の髪は最愛の妻シルヴィアの面影をラルゴに見せた。だが、その意志の強さは自分に似てしまったのだろう。対峙する時の彼女はいつもランバルディアの子であった。王女として、自分にできることをする。逢うたびにお姫様は城にいなくていいのか、と試すようなことを口にしてしまったが、正直なところ、その成長の様子を見るのが好きだった。お城の中で大人しくして、籠の中の鳥となって欲しいと願いながらも、ラルゴは少女が少しずつ成長していく様が嬉しかった。
しかし、今日が、最後である。
ラルゴは少女の、ナタリアの問いに答えることはなかった。
ラルゴは負けるつもりはなかった。だが、何故だろう。苦しそうな表情を見せるナタリアを見ては、それが最愛の娘メリルを取られて苦しみ身投げをしたシルヴィアの姿とかぶるのだ。それは想像の域でしかなかったが、ラルゴにはそれがわかる。他の道は、なかったのだろうか。決意を固めヴァンと共にあると決めたというのに、今、この時になって、ナタリアとしてではなくメリルとして彼女を見てしまうのだ。もし今この戦闘を止め、ナタリア達の築く未来を望めば、メリルと共に歩む道もあるのかもしれない。しかし、ナタリア達の望む世界を知るには、遅すぎた。もう、後には引けないのだ。
一瞬の隙が、ラルゴの胸を射抜く。確実に心臓を狙ったその攻撃を受け、ラルゴが思ったのは悔しさではなく。
「・・・良い腕だ。・・・メリル、大きくなったな。」
安堵感であった。これでもう、メリルの悲しむ姿を見なくて済むのだから。これで彼女は、ランバルディアの子として、生きるだろう。
「あ・・・あぁ・・・。」
ふらふらと近寄ってくるナタリア。今、この時だけは、最愛の妻シルヴィアとの念願の娘、メリルと思っても良いだろうか。
「(最期にその位は、望んでいいよな、シルヴィア。)」
視界が霞んでいく。身体は冷たくなっていくというのに、温かい光が自分を包んでいくような気がした。ぼやけていく景色の中、金の光だけがはっきりと見えた。
「さらばだ、メリル・・・。」
目を閉じる。金の光はもう、見えなかった。
「お父様・・・。」
暗闇の中聞こえたのは、愛しいメリルの声だった。
2008/02/04 ゆきがた
(ブログから再録)
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