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紅凜学園
どきどきばくばく
 


これで、こんな噛み噛みなちんちくりんは息子の婚約者には相応しくない、とでも思っていただければ儲けものではあるが…。それもそれで、悲しいけどな…。



「いえ…そんなっ…」


か、可愛い…?挙動不審なのに?意外と好感触なのか?

きらびやかな世界に慣れているご夫人は、俺みたいな凡人が物珍しくて可愛く見えてしまったのだろうか。凡人の、慌てふためいている様が。他の可能性が考えられなかったため、この異常な事態をそう結論付けることにした。



「初めまして、涼くん。黒翼誓治(こくよくせいじ)です」


ふわりと優しそうに笑う黒翼さんには、同性として憧れてしまう。大人の余裕をちらつかせるその笑顔に、俺が女の子なら、確実に見惚れていたはずだ。かっこよすぎますよ黒翼さんっ。


憧れて…目標にしたところで、どうせ俺はこうはなれないけどね。そもそも、元の造りが違うわけだし…俺には凡人がお似合いなんだよ、わかってる!こんなに色気ないしな!



「ごめんなさい、挨拶がまだだったわね?黒翼英理(えいり)です」


思い出したように、顔の前で手を合わせる仕草が可愛らしい。世界的にも有名な黒翼ご夫妻とのご対面にわたわたとしながらも、なんとかお二人と握手を交わした。スラックスでさりげなく拭ってはおいたが、緊張のあまり手汗をかいていなかったか不安だ。


…ちょ、あれ?マジで男と結婚する感じになってませんかね?和気あいあい、みたいな。いやいや!そんな感じいらないから!

どうしたらいいんですかっ…アドバイス求む!



「私、これから少し用があるので…お二人に涼をお願いしてもいいですか?ご迷惑をおかけすることは、ないと思うので」


もう現実逃避に走ればそれがいちばん楽なのではないか、なんてなんの解決にもならない作戦を考えていると、母さんがまた、とんでもないことを言い出した。


いろんな衝撃で神経がすり減って、騒ぐ気合いすらなくなってきた俺には、事の成り行きを見守ることしかできない。

もとより、こんなセレブさんたちがたくさんいるロビーで全力の突っ込みなんて入れていたら、マナーを知らない庶民として認識されること請け合いだ。まったくもって、その通りだけど!


 

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あきゅろす。
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