紅凜学園 温度が伝わる 「…なんですか、それ。別に、投票したい人がいないだけですよ。ご迷惑でしたら、他の人にしますけど」 「いやいやっ、俺の番号で!」 他の奴に投票なんて許してたまるか!と…少し頬を膨らませた可愛らしい姿の姫色に、急いで弁解した。 どうしてこのように申し出てくれたのかはわからないが…気が変わってしまうのでは困る。 「じゃあ、投票してきますね。…塔鶯さん?」 投票所に行こうとする姫色の華奢な手首を掴んで、引き留める。 振り向いた姫色は、不思議そうな顔をして塔鶯さんを見上げた。 「……っ、何を…!」 手首を引かれ、目を見開く姫色は暖かい何かに包まれる。 それがなんなのか理解するのに僅かに時間を要したが…塔鶯さんに抱きしめられたのだとわかった瞬間、姫色は塔鶯さんの胸の辺りに手を置いて、押し返した。 「悪いな。姫色ちゃんが可愛いから、つい」 「……つい、でやることじゃありません」 にやにやと締まりのない表情で、姫色を解放する塔鶯さん。対する姫色はというば、眉の間に皺を寄せた、難しい表情だ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |