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紅凜学園
そして始まる
 


前方から優雅に歩いてくる男女二人に、母さんは立ち上がり親しそうに話しかける。このお二人が、先方のご両親のようだ。あの優美さは、黒翼さんたちに間違いない。でもあと5分、時間をくださいませんか。心の準備をしたいので。



「お待たせしました」


俺たちを見つけ、申し訳なさそうに眉尻を下げて言った女性…黒翼夫人は、金色の長い髪を緩やかに巻いていて、淡いピンク色の華やかなスーツを着ている。

ぱっちりと大きく、長いまつげに縁取られた瞳は黒だが、どことなく外国の血が入っているようにみえる顔立ちだ。とにかく、とてつもない美人さんである。


ちなみに俺の母さんは栗色のウェーブがかった長い髪に、白のスーツという出で立ちで、俺とは違って瞳も栗色だ。うちの母さんもご夫人も、20代くらいにしか見えない。


そして男性の方は、艶やかな黒髪を後ろに流した、切れ長の藍色の瞳を持った超絶美形だ。ストライプの入った、黒のスーツを纏っている。その笑みは柔らかいが、やはり佇まいには風格がある。これが人の上に立つ人のオーラ、ってやつなのか。圧倒されるなー。


ここにいる人たち…俺以外、美形ばっかり…!母さん含め!美形の中の凡人なんて…目の保養、とか喜んでいられるような状況じゃないぞ!落ち込むしかないよ、こんな事態!



「涼っ、ご挨拶なさい」


母さんに促されて挨拶がまだだったと気付いた俺は、緊張しながらもお二人に向かってぺこりと頭を下げた。

上手いこと婚約破棄の方向に持っていきたいというのに、心臓がばくばくと尋常じゃない音を立てている。だって、こんな優美な人たちと話したことなんかないんだよ!


何はともあれ、とりあえずは、ご挨拶だご挨拶!重要だぞ挨拶は!婚約だとかどうだとか、そういうのには関わらず、ね!



「は、はじめましてっ、す、涼ですっ!」


噛んだしね!噛んじゃったしねっ!恥ずかしいな俺って奴は!第一印象最悪じゃないのこれ!



「まぁ、本当に可愛らしいのね」


ここからダッシュで逃亡したいほどの羞恥から、顔を熱くしてあたふたしている俺の前へと歩み寄る、ご夫人。初対面からこれなんて、恥ずかしすぎて本当に落ち込む。


 

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あきゅろす。
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