紅凜学園 期待を裏切らない男 大きなソファーの沈むような感覚に、思わず目を閉じる。眠くなってきたな。寝てもいい? 「好きなだけゆっくりしていきなよ。隣に仮眠室もあるしね」 姫色は、うなだれている俺の頭をさらりと軽く撫でる。優しい手つきに、瞼は更に重くなっていった。姫色さん、俺は子供じゃないんだってば。最近の姫色はお母さんみたいだよね。俺の保護者。 「涼、紅茶、飲むよね?」 「んー。ミルクティーがいいな」 「了解」 姫色は俺の注文を聞くと、向かって左側にある扉に入って行った。あちらに給湯室でもあるのかもしれない。仮眠室もあるらしいが…ますます規格外だ。 俺が通ってた中学の時の生徒会室なんて、それはそれはボロ…いや、古くて趣のあるところだったぞ?仮眠室なんてものなかったし。 「どーぞ」 「いただきまーすっ」 少しすると、姫色がトレイに二人分の紅茶を載せて運んで来た。…あ、なんだかすいません。自分の部屋の如く寛いでいて申し訳ない。 俺の前に紅茶をおくと、自分のカップもおいてから、向かいのソファーへと腰をかけた。 姫色が運んでくれたカップを持ち上げ、しげしげと眺める。このカップもブランド品なのだろう。もしくはアンティーク品。割らないように気をつけないと…俺だったらやりかねない。信用ならないね。 傷一つつけるわけにはいかないとそわそわしながら、甘い香りのするカップに口をつけた。 …わ、これ……!! 「…美味い!姫色…紅茶いれるの上手くないか?」 すごいよ姫色っ!俺の飲んだミルクティーの中で歴代No.1っ!チャンピオン! このミルクと紅茶の割合とか甘さとか…絶妙な味わいすぎる!おかわり100杯は余裕でいけるね! 「まぁね。ほら、俺っていかにも紅茶を煎れるの上手そうでしょ?見た目から」 「あー…確かにそれは」 それは、納得せざるを得ない。王子様じゃなければ、どこかの貴族じゃないのか、という容貌の姫色だ。紅茶に関しても詳しそうなイメージがある。本物の貴族が、自分で紅茶をいれたりするのかは別として。 「それはともかく、そろそろ本題に入る?」 「本題?…あっ!」 [*前へ][次へ#] [戻る] |