紅凜学園 進まないのは俺のせい 男と…っていうのは、考えてもみなかった。 「空牙くん、いい子なのに」 「…ま、ねぇ…」 俯いて黙り込む俺に、母さんはもう何も言わなかった。 嫌な奴だとかそういう風には思ってないよ…別に。黒翼のせいじゃなくて…性別の壁を乗り越える勇気みたいな…まぁ、俺のせいです。 「ほら、変装なさい」 「あー、そっか…」 母さんに言われるまで、黒翼と会うならば変装が必要だったということを忘れていた。 あれれ…母さん変装反対派じゃなかった?…や、そういう派閥、存在してないですけども。 「ねぇ、涼」 「ん?」 そのまま…母さんに促され、髪はスプレーで黒に染め、眼鏡をかけた。道具は母さんが持って来たらしい。 うわ、手、汚れた。ここ…冷蔵庫もあることだし、水道はないのか?…あ、ウェットティッシュ発見!改めて準備いいね! 「いつになったら素の涼を見せるのよ?早めに言わないと、あとが面倒じゃない?」 「そう…だよね。わかってる」 なんだか黒翼に嘘をついているという事実を思い出すたびに、胸が痛くなる。自業自得だけれど…。 [*前へ][次へ#] [戻る] |