紅凜学園
婚約破棄
さぁ!断ってくれ!テメェみたいな平凡庶民と婚約なんてしたくねーよ、とか言っても構わないから!
ちょっとはムカつくよ?!そして…プライドがガタガタいうかもしれない!崩れ落ちて!でもこの際仕方がないんだ…!
族潰しなんてやってれば、なんらかの恨みをかったりするかも…とは思ってた。
でも、こんな目に合うなんて…思うわけないだろ!因縁?の相手と婚約するなんてっ。これを予想できたらすごすぎる!そんな能力あったら、占い師になるよ俺。
「く、空牙…さん?」
返答を待つ間の沈黙が、やけに長い。心臓も、早鐘を打っている。何かを待っている時間って、やたらと長く感じるよね。楽しい時間は、あっという間に過ぎちゃうのにな。
俺の必死の問いかけに、黒翼は、目線を落とし考え始めた。
神様っ!どうか俺を助けて下さいー!これが一生のお願いでもいいです!まだ15年しか生きてないけど、それでもいいですからっ!
「あぁ……受ける、この話は」
な、ななななな…なんだって??!!う…受ける?!婚約を、受けるっ?!
黒翼の口から飛び出た予想外の言葉に、俺は椅子から立ち上がってしまった。
勢いよく音をたてて立ち上がったので、周りにいる他のお客さんから不思議そうな視線が集まったが…のちのち羞恥と後悔に苛まれるとしても、今はそんなことは気にしていられない。なぜならこれは、俺の今後の人生に関わる、重大事件なのだから。
「か、解消しないんですかっ?!い、いいんですか、ほんとに!」
ええっ?!正気かっ?!
相手は男だぞ!しかも美少年とかじゃなくて、なんの取り柄もない、どこにでもいそうなこんな奴!ちゃんと見たか、俺のこと!いややっぱりじっくり見られたら困る!ともかく、今ならまだ間に合うから、考え直してみろって!人生が狂ってもいいのかっ?!
「まぁ!よかったわ!空牙なら、このお話を受けると思っていたのよっ。涼くん、可愛いもの!」
「涼くんが私たちの息子になってくれるなんて、嬉しいよ」
黒翼の発言に目を輝かせたご夫妻は、至極嬉しそうにしてくださる。セレブさんに囲まれたここで、実際に大声を出すわけにはいかないが、心の中で叫ぶことは許してほしい。
だからっ、俺は男ですってばー!!
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