Top Secret
-1-
 移動に使うワゴン車の中、最後部の座席に深々と身を沈めていた湊(みなと)は、唐突に起き上がり前の座席へ乗り出した。

「この曲なに? なんていうの? 誰の曲?」

 高速道路でスピードを上げるワゴン車の中では、先ほどから軽快な音楽が流れている。

 どれもこれも馴染みの曲で、取り立てて反応を示そうとはしなかった湊だが、今の曲が流れだしたとたんに眸の色を変えたのだ。

 知らない曲。初めて聴くリズム。

 もちろん、それだけではない。

 耳に届く音には、確かに湊の好奇心を煽るものがあった。

 心に響く音。魂を揺さぶられるとでも言おうか。

 湊は身体の芯が熱くなってくるのを感じた。

 血が沸き立つ。

 握りしめた拳が興奮に震える。

 この音。―――間違いなくこの音だ。

 湊は直感した。

 漠然として形を成さなかったそれが、今間違いなく眸の前に存在している。

 いや、やはり形など存在しないと言った方が正しいだろうか。

 形なく、姿なく。

 けれどそれは、確かにそこにあった。

 眸には見えない音という存在。

 湊が探し求めていたものに限りなく近いそれ。

「誰の音? 誰の曲?」

 湊は必死に応えに縋ろうとしていた。


[次へ]

1/29ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!