Top Secret
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移動に使うワゴン車の中、最後部の座席に深々と身を沈めていた湊(みなと)は、唐突に起き上がり前の座席へ乗り出した。
「この曲なに? なんていうの? 誰の曲?」
高速道路でスピードを上げるワゴン車の中では、先ほどから軽快な音楽が流れている。
どれもこれも馴染みの曲で、取り立てて反応を示そうとはしなかった湊だが、今の曲が流れだしたとたんに眸の色を変えたのだ。
知らない曲。初めて聴くリズム。
もちろん、それだけではない。
耳に届く音には、確かに湊の好奇心を煽るものがあった。
心に響く音。魂を揺さぶられるとでも言おうか。
湊は身体の芯が熱くなってくるのを感じた。
血が沸き立つ。
握りしめた拳が興奮に震える。
この音。―――間違いなくこの音だ。
湊は直感した。
漠然として形を成さなかったそれが、今間違いなく眸の前に存在している。
いや、やはり形など存在しないと言った方が正しいだろうか。
形なく、姿なく。
けれどそれは、確かにそこにあった。
眸には見えない音という存在。
湊が探し求めていたものに限りなく近いそれ。
「誰の音? 誰の曲?」
湊は必死に応えに縋ろうとしていた。
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