番外編 幸せの増す速度 未来のもじもじくんたち 確かな温もりが腕の中にある。 それが、泣きたくなるくらい幸せで、 どうしようもなく、愛しさは募る。 安心しきった顔で俺の胸の中で智也が眠っている。 学年が上がり高校と大学に学校が別々になったことで会う時間が極端に減った。前までは校舎の中で見かけなくとも、学校という同じ空間に居るという事実からか、学校の中に居れば、智也の気配をなんとなく感じていた。 今は、全く別の学校だ。気持ちが離れるとかそんな不安はないが、やはり校舎内に智也の気配がないことに違和感は拭えない。 そんな時、「ああ、別々の場所にいるんだな」と改めて感じる。 これを「淋しい」というのだろうか。 教室に行けば、会えたはずなのに、今は連絡を取って会わなければいけない。それがもどかしくてならない。 それは智也も同じなのか、二人きりになれば、ピタリと寄り添ってくる。それが、あからさまに甘えることはしない智也の精一杯の甘えだということを俺は知っている。 なぜなら、寄り添う時、智也の耳はいつもほんのり赤みを帯びているから。 「むぅ……」 ゆっくりと髪を撫でいると、もっと胸の中に入ろうと智也が動く。その行動に目を細める。 幸せだ。 幸せすぎて、眩暈がしそうだ。 いつになったら、俺は平常心で彼と過ごすことができるのだろう。 今でも、逢えば胸が馬鹿みたいに跳ねる。 智也の笑顔に、弱い。 拗ねられれば、悪いが可愛いと思う。 泣かれると、参ってしまう。 昔の俺から見たら、ありえない姿だろう。たった一人の存在に一喜一憂するなんて。 頭のてっぺんにキスをひとつ落とす。 逢う時間は減った。 それでも、 愛しさが増す速度は変わらない。 幸せが消えることはない。 好きで 大切で 唯一で かけがえのない 変わらない、俺の存在意義。 「……おやすみ」 また明日、 俺は幸せを手に入れる。 end [*前へ][次へ#] [戻る] |