番外編
ズルイ人
由×智の未来のお話です。ラブ、ラブ…かなぁ。
*
ゆっくりと唇を合わせる。ふるり、と智也の身体が震えた。
うっすらと眼を開けて見れば、智也は耳を赤くして、眼を堅く閉じていた。
ふ、と笑みが零れる。
口づけ以上のことを、もう幾度となくしているというのに、反応は変わらず初々しい。
「…ふ、ぁ…」
息苦しさから口を開けた所を見逃さず、舌を口内に割り込ませる。ゆっくりと智也の歯列をなぞり、舌を絡めとる。
「…んん…ふ……」
頬に添えていた手を腰に回し、角度をかえて、智也の唇を堪能する。
この瞬間、いつも思う。
このまま、貪り尽くせたらいいのに、と。
そうして、コイツを自分の一部にしてしまえば、もう離れることなどないのに、と。
とんとん、と智也に胸を叩かれ、渋々唇を解放する。
「…はぁ、は、…」
息苦しさだけではないだろう。
智也の瞳はとろんと蕩けていて、頬は桃色に染まっていた。
「顔、紅い」
くつくつと笑いながら頬を撫でる。
「…しょうがないじゃん。苦しかったんだから」
頬を膨らまして、唇を尖らせて拗ねる。そう云いながら唇を尖らせている。そこに笑いながら、またキスを落とした。
すると茹であがった蛸のように急激に真っ赤になっていった。
「真っ赤だな」
また、自然と笑みが零れる。
「うう、うるさいやいっ!」
唇を腕で隠しながら、俺から距離を取りながら、セクハラ!なんて叫んでいる。
けれど、どこかに行ってしまう素振りは全くない。
「智也、」
智也の名前を呼ぶのが好き。
手をひろげる。
そして、わざと妖艶な笑みをつくってみせる。
「おいで、」
そう言うと、智也はまた顔を紅くした。
そして、おずおずと近づいてきて、シャツの裾をきゅう、と握った。
「…ズルい」
俺がその顔に弱いの知ってるくせに、と眼で非難される。
俺はニヤリと笑って、
「知ってる」
と応えた。
そうして、裾を握っていた智也の手をやんわりと握りしめて抱き寄せる。
すると、すり、と智也が胸にすり寄ってきた。
けど、な、と心の中で呟く。
お前もズルい。
俺は、お前の一挙一動全てに弱いんだから、と。
(…参った、)
自分がこんなに溺れるとは、
(予想外だ)
こんなに誰かを欲するなんて。
けれど…
きゅ、と智也抱きしめながら、ふ、と口元が綻ぶ。
(こんな自分も悪くない)
end
甘…!←
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