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1秒でも長く、君がここに






“偶然見つけたんだ”なんてさっき言ったけど
本当はずっと前から君を連れてきたかったんだ





「式、いつだっけ?」

「うん?ああ、来月だよ!南野君も来てくれるよね?」

「…ああ」

「ふふっ、楽しみ」




そう言いながら君は彼からもらった指輪を眺めた
薬指に輝くそれはほかでもない俺以外の男からもらった物





「やっとだよー!待ちくたびれちゃった」

「…3年だっけ?付き合って」

「そう。こっちから迫って迫って、やっとプロポーズじてくれたの」

「意外に積極的なんだ、名前は」

「積極的にならなきゃおばあちゃんになるまでずっと待たされそうだったよ!」

「あははっ」

「もう!笑わないでよー!苦労したんだからー」



こんな風に2人でカウンターに座って笑い合っていたら
周りから見れば恋人同士に見えるだろうか
このまま時が止まってしえばいいのになんて考えてしまう
“今だけでいいから、俺のものでいてくれないか?”
なんて、そんな事言えるはずもなく、ぐっと言葉を飲み干した




「それでねー、彼ったら…」



頬を染めてはにかみながら彼の話ばかりを繰り返す君
「うん」「そう」と相槌を打つが俺は耐えきれなくて注文したバーボンを喉に通した




君の事ならどんな事でも知りたいはずなのに




「南野君お酒強そうだね」

「そうだな、強い方ではあるかな」

「あたしあんまり飲めないんだよねー」

「そういや飲み会でもあんまり飲んでないもんな」

「すぐ酔っ払っちゃうの!だからほんとは彼にも止められてるんだけど…。今日は特別」

「なんで?」

「南野君ならなんか信用出来るもん」

「へぇ…、それはどうも」

「内緒ね!」




そう言いながら彼女はカシスソーダを飲んだ
その横顔は艷やかでとても綺麗だった




もっと飲んで酔ってしまえばいい
そして俺の肩に寄りかかればいい
彼のことなど忘れてしまえばいいのに



名前

「うん?」

「グラス空きそうだね。何か新しいの頼む?」

「うーん…、飲み終わってからでいいや!」

「そう」



そのカシスソーダがなくなれば
君は彼の胸に戻るのか?




「てゆうか、南野君はどうなの?」

「何が?」

「彼女、作らないの?」

「…今はいいかな。失恋したばっかだし」

「えー!!南野君が?!その子もったいない事したねー」

「そうかな」

「そうだよ!!早く忘れちゃいなー。新しくいい子見つけてさ」

「ああ…」



忘れるなんて出来るわけないじゃないか
こんなにも君を想っているのに
君のほうこそ忘れてしまえばいいんだ


このまま鍵をかけて終電を超えて
君がこの店から帰れないように




「酔った?」

「そうだな…、久々にこんなに飲んだよ」

「ふふっ、誘ってくれてありがとう」

「幸せになれよ」

「うん…、本当にありがとね」

名前

「ん?」

「…」

「南野君?」






”愛してる”






あと少しで出そうな言葉を残りのバーボンと一緒に飲み干した
そして時計の針を気にした




「送るよ、名前





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