[携帯モード] [URL送信]
スイートハニー












「あれ?苗字?」

「あ、南野くん?」



下校時刻1時間前の誰もいない教室で一人あたしは机に向かっていた
めんどくさい事なんて嫌いなのに何故か文化祭の実行委員になってしまった
おかげでこうやっていろいろと雑用をやるハメになる



「大変そうだな、手伝おうか?」

「いや、大丈夫だよ。南野くんはどうしたの?」

「部活の帰り。ノート忘れて取りにきた」

「ふーん」


なんて興味なさそうに相槌をうつ
シーンとした教室に心臓の音が響きそう



「ちょっ!なんで座ってるの!」

「いや?」

「いやって言うか… 帰らないの?」

「さっきから苗字の手が動いてなさそうだから」

「あ…」



そう言いながら彼は睨めっこをしていたプリントを覗きこんできたから
あたしたちの距離が急速に縮められた


こんな至近距離の南野くん見るなんて始めてだ…



「どうかした?」

「へっ? あ、いや、なんでもない…」


心臓がうるさすぎて南野くんにも聞こえるんじゃないかって思って
それを隠そうとしてしどろもどろになる



苗字って意外とドジだよな」

「なんでよ」

「よく遅刻ギリギリに学校来るし、お喋りしすぎてお弁当慌てて食べたり、自販機でジュースを買おうとして間違えてコーヒー買ってたり」

「なっ… あれは!ちょっと間違えただけよ!」

「『コーヒー飲めないのに〜!』って。笑いこらえるの大変だったよ」

「…南野くんって意外と意地悪なのね」

「好きな子っていじめたくなるもんだよ」

「えっ…」

「まだわからない?」



いやいやまさかね、
こんな少女漫画みたいなことあるわけない



「からかわないでよ」

「からかってるように見える?」

「見える!やめてよねー…っ!」



カタッっという音がしてそちらに目を向けたら
こちらに近づいてくる南野くんの顔
驚いて身を反らしたが彼があたしの腕を捕らえていたため敵わなかった


彼の長いまつ毛があたしの瞼に当たって
ぎゅっと握られた腕からはぬくもりが伝わって
優しく触れた唇は彼の甘い唇の味がした



「わかった?」

「…わかんない」

「まだして欲しいの?結構積極的だな」

「いや!いいです!!わかりました!!」

「そんなに拒否されると傷つくな…」

「あの…それで南野くん…」

「うん?」

「あたしの事…」



なんだか自惚れてるみたいで続きが言いづらい
それでなくてもこの急展開に頭がついていかない



「その…」

「好きだよ」

「へ…?」

苗字のこと、好きだよ」



くらくらする
パニックになりつつあるあたしは必死で思考を巡らせた



苗字は?」

「あ…、えと…」



もう喉がカラカラだし声も震えてるし
思いもよらない告白で涙がでそうだし
きっと顔もこの夕日に負けないくらい真っ赤だ
思わず俯いてしまった



「あの…えと…」


「聞かせて?名前



苗字ではなく名前を呼ばれたことに
はっとして顔を上げて彼を見ると
今まで見たこともなくらいの優しい笑顔




「好き…、南野くんが好き…」



そう言ったら想いと一緒に涙が溢れた



いつの間にか隣にきていた南野くんは
泣くあたしを優しく抱きしめた



名前

「…南野くっ…」



耳元で囁かれて顔を上げて彼を見る
そうしてまた南野くんは笑った





2回目のキスは、蜂蜜よりも甘いくちづけ


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!