君への愛はいつも一方通行 すー…。 言葉に表すならまさにそうだった。 彼女は毛布にくるまって簡易ベッドで寝息を立てている。 形容するなら、人間でいう所の所謂死んだように眠っているだろうか。 彼女の寝息は非常に小さく、意識して聞き取らなければ聞き逃してしまう位に小さい。 ジェットファイヤーはなるべく音を立てないよう静かに芳月に近付いた。 寝顔は非常に大人しいなとジェットファイヤーは思う。起きている時とのギャップが大きい。しかし、それはそれで良いものだと1人納得してジェットファイヤーは暫く芳月の寝顔を観察した。ちゃっかり寝顔をメモリーに記録もしておく。 『まったく…本当に逮捕しちゃうぞー』 本人が起きている時に言ったら間違いなく引かれるだろうが寝ているので気にしない。 起きたらまた司令官の元へ行くんだろうなあと思いながらジェットファイヤーはため息を吐く。司令官に向ける表情を自分にも向けてくれないかなあ、なんて願いながら。 『んー…姫君は騎士の口付けで起きるのがお約束だよな』 「…う」 『さあ、姫君。貴女の騎士が参りましたよ』 「……何言ってんだ」 恭しく跪いて言えば眠気の残る目を向けられた。ツッコミもあまりキレがない、まだ眠いのだろう。 手で目を擦る様子が何だか可愛らしく見えて、これ以上自分を惚れさせてどうするつもりだとジェットファイヤーは改めて手錠を取り出した。 「何だそれは…」 『俺を誘惑しちゃった罪で逮捕させていただきマス』 「いや、あの…意味分からんのだけども…」 『こーの罪作りさんめ!』 「意味分からんわ!」 君への愛はいつも一方通行 [*前へ][次へ#] |