にゃんにゃん!
にゃあ
にゃあ
「…………。何だこれは」
今日は天気がよく、格納庫の外にてアイアンハイドとの訓練を終えた芳月は格納庫に常備しているタオルを取りに来た。
中に入ってすぐだ。
カシャンカシャンと軽快な金属音がしたと思ったらそれが芳月にタックルしてきた。疲れも手伝って芳月は背中から倒れてしまう。いきなり何事かと起き上がり、自分にタックルしてきた物体を持ち上げて床に降ろした。それは例えるなら猫ほどの大きさの、と言うよりほぼ金属的な猫だった。ラチェットかディセプティコンのドクター辺りが実験目的で作ったのかと思いつつ自分の足に擦り寄ってくる猫2匹をしゃがんで撫でた。
「しっかし随分とまあ可愛げのある猫ちゃん達だこと。おっとこうしちゃいられんのだった。汗だくだから着替えに戻らんと」
芳月が暑い暑いとTシャツの裾を掴んでバサバサ上下に揺れ腹やらその上の胸元やらが露出するが誰がいるでもないので芳月は遠慮なく振った。心なしか猫達がガン見しているような気がしたが気のせいと決めた。
しかしやはり気休めにしかならないので猫達にじゃあねと手を振り、芳月はタオルを取ると自室へとダッシュする。
格納庫を出て自室へ続く廊下を走っていく芳月の後方からカッカッと床を蹴る音が聞こえてきた。振り向くとそこには先程の猫達が。
まあいいかと思いながら自室へと戻ると猫達も一緒に部屋に入ってきた。
「お前達、入ってもいいけど置いてあるハードや機械は触ったりしたらいかんよ」
理解出来るかどうかは置いといて一応の注意はする。流石に全機種買い直すなんて真似したくはない。
しかしそんな芳月の心配を余所に猫達はピシッと大人しく芳月のベッドに登り待機している。
「おお偉い偉い」
『『にゃあ!』』
「はは、素直だね。さてと、着替えるか」
そう言って芳月がTシャツを脱ごうとした時だった。
ギニャァァァァア
「何事!?」
1匹の猫が片方の猫を潰しにかかっていたではないか。芳月は脱ぐのを止めて慌てて猫を止めにかかる。
「こらっ、止めんか」
互いを離れさせてから喧嘩はするんじゃないと言い聞かせ、芳月は何となく着替え辛くなりバスルームでわざわざ着替えを行った。何故猫に気を遣わねばならんのかとも思ったが考えると疲れるので細かい事は気にしない事にした。
「よしよし、大人しくしてたみたいだね。偉い偉い」
頭を一撫でしてからベッドに腰掛けて猫達を膝に乗せた。多少ずっしりしているが耐えれない程でもない。辞書を乗せているような感じだ。
「さてさて、ゲームしよっかな」
カチッとスイッチを入れて、つい最近買ったばかりのゲームを始めた。
しかしものの5分としない内に猫達がじゃれついてきて、ゲームを中断させられる羽目になった。流石に金属的猫といえど拳骨をくれる訳にはいかないので仕方なく猫と戯れる事にする。
「しっかし、今日は1回もジャズとブラックアウト見てないよなあ…お前達は見てないかね?」
『にゃー』
『にゃっ』
「分かる訳ねぇか。まあ何処で何してようが別段気にはならんけど」
うりうりと猫達をつつくと猫達はにゃあにゃあ鳴きながら芳月すがりついてきた。何かを訴えかけているようだが生憎猫語は分からない、芳月は適当に猫達をあやしながらベッドに寝転んだ。
寝転んでしまうと疲れからか瞼が少し重くなる。ああ寝ちゃうかなあ、なんて思った矢先に猫の1匹が芳月の顔面に飛びかかってきた。
鈍い音がして芳月がもんどうりうつ。
「オォォォォォォ…!」
物が物だけに威力でかし。
それを身を以て知った芳月だった。
「かっ可愛い振りしてなかなかやるじゃないか…!」
『にゃおん』
構え、と案に言われたような気がして、芳月は眠気を殺し猫達とじゃれあう事にした。猫じゃらしとかは無い為基本撫でたりくすぐったり、だったが。
生き物と違い金属製な為餌も特に必要無さそうだったが果たして充電とかは必要なのだろうか、とか芳月がふと考えた時だった。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
「誰だよ全く…、はいもしもし」
突如として鳴り響いた携帯電話の着信メロディーに芳月は発信者を確認するのを忘れ、そのまま出た。
聞こえてきたのは知った声。
知らず眉が寄ったのは発信者の日頃の行いによるものだと思いたい。
「何か用かね」
『芳月、ジャズとブラックアウトを見てないか?』
「ラチェットが知らんなら私が知る訳ないでしょーよ」
アホらしとベッドから起き上がり、軽く喉の渇きを自覚した芳月が冷蔵庫に入っている烏龍茶のペットボトルを取りに行く。大方何かの献体にでもしようとしたんだろうと言ってやると、コツコツガラス窓をつつく音がして近寄ると黄緑が見えて、芳月は窓を開けた。何だ、そんな所にいるなら電話も要らないだろうと言ってやれば気分さと返された。
「図星かい」
『いや、既にやってしまった後でね』
「は」
『少しいじったら逃げられてしまってね』
ブフーッ
思わず口に入れた烏龍茶をラチェットに向かって思い切り噴き出した。
仕方ない、悪いのは軍医だ。自分は悪くない。
「で、何したよ」
『意識だけを他の体に移す、というのをやってみたんだ』
「…、因みに何に移したか聞いていいか」
『猫だ。小さな、金属製のね』
何という事だ。つまりあの猫達はジャズとブラックアウトで、格納庫で会った時の扇いでた腹やらを見られた訳ではないか。わ、私の貧弱バディ…!!
サッと芳月の顔が青くなった。
「…。ほ、ほっといても戻るもんかね」
『戻ると言えば戻る、が…どうせなら観察をしたいだろう?』
「…後で連中の記憶の一部消してもらいたいんだが」
『?見られて困るものでも見られたのかね』
「ちょっと、な」
一応念の為だと言うラチェットに芳月が先程の猫を引き渡そうと部屋に視線を戻すと、何という事か。猫がいないではないか。
逃げやがったな、芳月は烏龍茶のペットボトルを冷蔵庫に突っ込み捕獲に走った。
猫達の至福は一時(その後猫達は鬼のような芳月により捕獲されたらしい)
その後、鬼の形相な芳月によって猫だったジャズとブラックアウトはメモリーを消されそうになり、オートボットの司令官と軍医によって阻止されたらしい。
めでたし、めでた芳月「めでたくねぇ」
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