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1周年感謝夢‐三国伝曹操編







チュンチュン

チチチ…


「…う、明るい。やば…もう朝なんだ。本読んだまま寝ちゃったんだっけ」

机に突っ伏したままでいた芳月は鳥の囀りで目を覚ました。起きたばかりのはっきりしない意識の中、ふわりと鼻孔をくすぐる甘い匂いに芳月は眉を寄せた。

「ふわァ…、…?この部屋に花なんて飾ってたっけな」

机の横には一輪の薄紅色の小さな花が花瓶に挿されていた。一輪でしかないがどこか凛とした印象を受ける美しい花だ。
はて確か昨日の夜には無かった筈だ。誰かが置いていったのだろうか。
芳月の部屋は至って殺風景なもので気紛れに置いていったのだろうと当たりをつけた芳月はもう一度欠伸をすると部屋を出た。

部屋を出て直ぐに徐晃と張遼に出会した。もしかしたら彼らかなと、芳月は何となしに尋ねてみる。
しかし揃って彼らは首を横に振った。

「あれ、違ったか」
『残念ながら我々ではありませんよ。姫様』
『張遼殿に同じくです。姫様の寝室に無断で入ったら将軍に睨まれますから』
「ううん、じゃあ夏候淵か筍イク先生かな…。ごめん引き止めて!また後でねー」
『姫様、お顔がまだ眠たそうですよ。井戸で洗ってこられるとよろしいかと』
「うん、ありがと徐晃!じゃ先そっち行ってくる」

徐晃らと別れた芳月は取り敢えず顔だけ洗ってこようと井戸へと向かう。徐晃の言う通りまだ少し眠気の残る目を擦り、井戸へと辿り着くとそこには先客がいた。見間違える筈は無い、と言うより一見で分かる。芳月に気付いた先客が、芳月が声を掛けるより早く口を開いた。

『芳月か。朝からだらしない顔だ、もう少しきりっと出来ぬか』
「朝からグサッとくる事言わないでよ…!だから顔洗いに来たんだから」

この約二等身めと小声でぼやけば曹操にギロリと睨まれる。こっこんな小さい事で怒んないでよ!と心の中で思いながら芳月はさっさと井戸から水を汲み上げて顔を洗った。冷たい水が気持ち良い。

「ふー…目が覚めるってイタタタタちょ、何すんのよォォォォオ!」

急に、遠慮のえの字も無いと言わんばかりに曹操が芳月の頬を抓りだした。その伸び具合を確かめるような、それでいてあまり容赦なく曹操は抓っている。

『もっと表情を引き締めろ。仮にも闘姫であろう』
「無茶言うなあ…」
『あの花ようにまでなれとは言わぬがあの花を見習え』
「あの花って…もしかしてアレ曹操が置いてったの?」
『あのように殺風景ではあの部屋も哀れだからな。お前が突っ伏している間に置いたのだ』
「へー、そうなんだ…って!仮にも女の部屋に無断で入るってどんな神経してんの…」

いや別に自分が女として魅力的ではない事位重々承知の上ですけど!
芳月がガックリと肩を落とすと、曹操はフッと笑い芳月の顔に布を押し付けた。

「なっ何すんの!」
『これで顔を拭け』
「あ、ありがと…ってちがーう!」
『あまり吠えるでない。それに何を驚く事がある。余とお前の間にそのような細かな事意味あるまい』
「えっ?」
『また訓練の時にな。今日は良い天気だ、訓練もはかどろう』

曹操の言葉に一瞬思考が止まった芳月を余所に曹操は何事も無かったかのように井戸を去っのだった。



「ええええー!?なっ何それぇぇぇぇえ!?」



しかし芳月は知らない。
暫くして曹操がこの上なく楽しげに笑っていた事を。











1周年誠にありがとうございますv







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