将校と副官と、
黄緑色の恐怖の大魔王が帰ったと思ったら、今度は入れ代わりに銀のソルスティスがやって来た。
曰わく、迎えに来たそうだが揃って帰るまでにはまた時間が掛かる訳なので、芳月は彼を連れて外に出る事にした。
曰わく、ソルスティスとポルシェを引き合わせてみようと言う思惑があったからだ。
「さあてさてさて、ポルシェ君は何処にいるかな」
『ポルシェって、こっちでの俺か?』
「そそ、こっちじゃマイスターって呼ばれてるんだって」
『へぇ』
「何か凄い紳士で最初驚いたけどねぇ」
でも最初は殴ったんだけどねと話す芳月に、ジャズは一瞬『あ、ダチになれるかもしれない』と思った。
「おっ、ラッキー。いたいた。ジャズ、アレだアレ。あのポルシェがマイスターだよ」
『おっ、おい!?』
窓から身を乗り出して前方から走ってくるポルシェに手を振る芳月に思わず慌てる。しかしすぐに車内に戻る芳月に安心し、ジャズは走るのを止めて停車すると芳月を降ろしてロボットに変形した。
同じく停車したポルシェもロボットに変形し、やあと芳月に軽く手を振った。
『昨日はホイルジャックとお茶だったんじゃなかったかい?もう帰ってしまって会えないんじゃないかと思ったよ』
「いや、色々あって…。取り敢えず何があったか聞かない方向で頼むよ」
『?』
「ま、まあそれは置いといてだ。えっと紹介するよ。こっちはジャズ、前に言ってた向こうでのマイスター的存在ね」
『へぇ、君がか。私はマイスター、よろしく。芳月から色々聞いているよ』
『色々?』
少し引っ掛かるものを感じたジャズ。
色々話す程芳月はマイスターと仲が良いのだろうかと。にこりと笑んでいるマイスターはそんなジャズの心情を知ってか知らずか少し屈んで芳月と視線を近くした。
『今日は君に渡したい物があるんだよ』
「へ?」
『これなんだけど受け取ってくれるかな?』
言ってマイスターが差し出したのは可愛くラッピングされた少し大きめの紙袋。開けてもいいかと芳月が聞けばマイスターは頷く。
ガサゴソと袋を開けると中からは白を基調とした黒のラインが入ったツナギだった。
「うわあ、いいのコレ貰っても」
『勿論。君に渡したくてね』
「何かマイスターっぽいね、このデザイン」
はははと談笑する2人を余所にジャズは1人固まった。何かインターネットで見た気がする。男が女に服を贈る時はほぼ下心があって、主に着せて脱がしたいという理由があると。
芳月がありがとうと礼を言ってツナギを袋に仕舞うと同時にジャズは芳月を腕に抱き上げた。
「ちょ、どうしたジャズ」
『オオオオネェチャンはやらねぇからな!』
「はあ?」
『ああー…そうか、成る程。君も私と同じなんだな』
『!やっぱりアンタもか!』
何故こうも自分の周りには厄介な相手が多いのか。と言うか自分だって服どころかプレゼントだってまともにした事も無いのに、何故この自分と同じ存在の筈のマイスターはこんなにも簡単にプレゼントが出来るのか。
羨ましい訳じゃない、悔しいだけだ。
『私も彼女の事、気に入っているからね。まあフェアにいこうじゃないか』
「彼女って誰だ」
鈍
余所様の事は空気読むくせに自分の事には全く興味を持たないせいか気付く気配はゼロ。酷い時には全く話を聞いてない時だってある。
『いや、まあ、そういう所もらしいっちゃらしいけどな』
『はは、まあ君のペースに合わせていくとするさ。そこの彼より厄介なライバルもいる事だし』
『何だその聞き捨てならないの』
『ははは。芳月、君はデストロンとも仲が良いものな』
「え、ああ、仲が良いってか、まあそうなんかな」
『そうなのか!?』
「ん、ああ、私メールのやり取りしてっから」
『初耳だぞオネェチャン!』
「いやだって一々報告するような事でもないし」
けろっと答える芳月に、ああそうだよな芳月はこういう人間性だったなと思いジャズは知らず知らずうなだれた。
「でもマイスターもたまにメールくれるよね」
『私もたまにそうしたい時があるからね』
『!?』
予想外のメール相手の多さにまたもやジャズはショックを受ける。
う、羨ましい訳じゃない、切ないだけだ。
「あ、ねぇマイスター。申し訳ないんだけど本日もサイバトロン基地で夜を明かしたいんだけど。コンボイに頼めないかな」
『ああ、構わないさ。司令官も歓迎すると思うよ』
「ありがとう、助かる。つかジャズ、そろそろ降ろしんさいよ」
『…嫌だ』
「ええっ?」
『ははは、そっちの私は何だかいじらしいな』
「ま、たまァにスタイリッシュで格好いいんだけどね」
『!?オネェチャン今何て!?』
「さて、空耳じゃね?」
取り敢えずいい加減に降ろしなさいよと、ジャズは裏拳を頂きました。
(君とジャズは仲良しなんだね)
(悪くはないと思うけど、うん)
(私も君と今より親しくなりたいな)
(そこ!抜け駆け禁止!!)
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