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アイアンハイドと






好きとか愛してる、だとか
お前が欲しい、とか

どうにも薄っぺらい気がする。


昔妹相手にそう言ったら何とも言えない顔で見られた。まあ、普通ならそうかもしれない。普通の女なら言われたい言葉なのだろうが、何故か私には薄っぺらく響く。
多分、それは自分がまともに誰かを好きになった事が無いからなのだろうけれど。
しかし、それでも上手くは言えないが何と言うか、信じられないのだ。
その類の言葉が自分に浸透しなくて、現実味が無い気がして。









「何つーか、こう…永遠に続く事が現実には無いと思ってるからこういう冷めた考えに行き着くんだろうけどさ」

少し冷め始めた缶コーヒーに口をつける。トップキックの姿でそれを横で聞いていたアイアンハイドは無言でいた。何故なら芳月は反論を求めていないからだ。

「永遠てさ、つまらんと思うんよ。私は。だからこそ存在せんと思う訳で。まああくまで私の持論だけど。極論だけど、永遠の命が無いのもそういう事じゃねーんかな」

ある意味、永遠なんてもんが無い所が唯一の平等なんじゃないかねぇ。
ぽつり、付け足すように呟かれた言葉にアイアンハイドはそうかとだけ返した。

「世の中は須く不平等だからねぇ。良くも悪くもさ。だからと言って自分が不幸とか言う気も無いけど」

『お前らしいな』

「言う気は無い、けど思いはするよ。だってそこまで人間出来て無いし。他人に自慢出来るような御立派な人間じゃないからさ」

ぐいっと残りのコーヒーを飲み干した。
そう言えば何でこんな話を始めたんだっけ、そんな事を芳月が呟けばお前の恋愛映画が苦手と言う話題から始まったとアイアンハイドが答える。

「そうだったっけ?」

『そうだ』

「そかそか。で、アイアンハイドはどうよ」

『興味を持つと思うか?』

「あー、そうは見えないね。ははは、でも確かにそれっぽい」

『お前は誰が言えば信じられるんだ』

「何、愛してるって?どーだろうねぇ。私他人の心読めんしなあ…。分からんよ。誰がってんじゃないからさ、私がそう思わないのは。そもそも愛って必要なのかも怪しいし」

『不要なら、存在しないだろう』

「あら意外、アイアンハイドは必要?」

『様々な形があるからな』

「ふうん…そんなもんかね。ま、それも生きてるからこそなんかもしんないけど」


まーでも…


「少なくともアイアンハイドが言うなら疑わないかもね」

『そうか』

「まあ、例えだけどね。何分私が好かれる性格じゃないからさ。アイアンハイドも私相手はごめんでしょ」

『そうでもない』

アイアンハイドの言葉に芳月の目が意外そうに瞬きを繰り返した。どうやら芳月の中ではそれは完全に予想外だったらしい。

「何で」

『お前が自分を卑下する性格なのは知っている。だが、お前を嫌う程にお前は非道ではない』

よく訓練にもついて来てくれている。
そう言ってアイアンハイドが大きく、ごつごつした金属製の指で芳月の頭を撫でると、芳月が何とも表現し難い戸惑いの表情を浮かべた後、「そっか」と僅かにはにかんだ。

アイアンハイドは芳月の一瞬浮かべるその表情が好きだ。
先のような事ばかり口にしていても芳月はアイアンハイドにとってみれば1人の女性で教え子で、だからこそほっとけなくて。
いつか誰かと幸せな未来を築くのかもしれないし、今の状態を貫くかもしれない。

『全ての宛てが外れたら来い。面倒は見てやる』

「はは、そりゃどうも。案外早いかもよそれ」

ポイッと空になったコーヒー缶を宙に放り投げるとアイアンハイドが御自慢のキャノン砲でそれを塵に帰した。
イエイと拳とキャノン砲を小突かせ、どちらからともなく笑った。




そしてレノックスに散々怒られた。










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あきゅろす。
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