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実写*ジャズ1






フーバーダムに来た芳月の顔を見にきたジャズの目に入って来たのはいつものツナギでワゴンRを丁寧に洗う芳月の姿だった。


『何してんだオネエチャン』

「見りゃ分かるっしょ。洗車だよ洗車、最近あんまり洗車してなかったからちょっと綺麗にせにゃいかんから」

『いつもはスクーターに乗ってるんじゃないのか?』

「車にも乗るよ。このワゴンR、日本から持ってきた爺さんのお古だけど結構付き合い長いから時々でも洗ってやらにゃ可哀想でしょ」


そう言うと芳月はジャズに見向く事なく愛車の洗車を再開した。
フーバーダムに来てまでする事だろうかとジャズは思った。その問いを投げかけると芳月からはオプティマスから了解を得たからと返ってきた。


芳月の愛車の洗車が終わると今度は車内の掃除に取りかかる。車内からは何故か健康に良さそうな野菜ジュース、フルーツミックスジュース、豆乳飲料の空パックが大量に出て来た。しかし成人の割にアルコール飲料の缶などは何も出て来ない。
ジャズの芳月の印象からはあまり健康に気を遣うタイプには見えない。
気になったジャズは再び問いを投げかけた。

『健康に気を遣うのか?』

「いや、そういう訳でもないけど。ただ私個人の嗜好、酒の代わりみたいな感じ。あんまり飲まないからねー」

『へえ』

「気付いた時に捨てないと溜まるからさ、軽くコレクションになるし」

ジャズの問いには答えるものの、やはり見向く事はなく掃除を続けていく。
まるであのワゴンRに芳月を独占されているような錯覚を覚える。
開いたドアから飛び出ている芳月足が揺れる。
全く相手にしてもらえないジャズは手を伸ばして芳月の足を掴んだ。下手に力を入れると折ってしまいそうなのでなるべく力を入れないように加減して。

ズルズルと車内から引っ張り出された芳月はといえばそのまま足を掴まれたままジャズに持ち上げられた。

「…おい、頭に血が上るから降ろすか向き逆にするかしてくれ」

『ん、ああ悪い悪い。人間てのは不便だな』

そう言うとジャズは芳月を手のひらに立たせる。

「どうしたよ、まだ私掃除終わってないんだけども」

『芳月』

「何さ」

『ワゴンRより俺に乗れよ』

「遠慮しとく」

『何でだ?』

「だって車検に出したばかりなんだからそうそう乗り換える訳にはいかないのだよ」

そこまでケツ軽くないのよと冗談混じりに笑う芳月。この時、その日初めてジャズと芳月がまともに顔を合わせた瞬間だった。

『じゃあそれ終わったら俺のドライブに付き合えよオネエチャン』

「いや無理」

『無理だァ?何でだよ』

「お前さんもこの後洗車する予定だからだよ。最近外砂埃凄いし、そこそこくっついてると思うし」

『…………。』

「ジャズ?」

黒の瞳が見上げてくる。
ジャズはスパークが跳ね上がるような錯覚を覚えた。

芳月はと言えばジャズの名前を連呼しながら降ろせとばかりジャズの指を叩いている。


「早よ降ろせっての、また言うけどまだ掃除終わってないんだから」

『あァ…悪い悪い。ほらよ』

「あともう少しで終わるから車の姿で待っててくれや。その後ならドライブにでも付き合うよ」

ジャズの手から降りた芳月はトントンとジャズの足を軽く叩く。

「だから暫く大人しくしててくれな」

『オネエチャンには敵わねぇなァ』

「?いや、意味分かんないし」

『こっちの事だ、気にすんなよ』

「そう?じゃ、ジャズ洗車したら他の連中も洗ってやらにゃならんからさっさと済ませるか…」


『おい』


「うん?」

『他の連中も洗車してやるのか?』

「そうだよ、各々から頼まれたからね。今が昼過ぎだから…ま、夕方までには終わるよ」

『…、まあそこが芳月の良い所だけどな』


何だかんだで人が良い。
だからこそジャズの抱えているものにも気付かない。

ソルスティスの姿に戻ったジャズは思った。






(いずれ気付かせてやるから覚悟しておけよ)
















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