ぜろろく
太陽の子 ぜろろく
名前の変化はそれだけではなかった。授業中にねむいなー
と思いながらふと名前に目をやった田島は見た。いや、むし
ろ見れたことに感謝をしたいくらいの勢いで。
（苗字めがねなんてかけてたかー？）
おさげの次は眼鏡だった。それも黒ぶちの眼鏡で、おさげの
名前にぴったりだった。いや、名前であればどんな髪型でも似合う
のであろうと思うが、たまたま見つけた今日はおさげ。気にな
った田島はすぐさまノートの隅っこをビリビリとちぎって、否、
正確には隅っこのつもりだったのだが、ちぎるというより破く
に等しかったので、隅っこではなくなった。それでもかまわず、
綺麗ともいえない字で"めがねかけてた？"と書いて、くしゃく
しゃに丸めてから野球部としての腕の見せ所、名前に投げた。
投げた紙はさすが野球部というべきか、それとも当たり前と
いうのか、名前のもとへしっかり届いた。名前はいきなり紙が飛ん
できてさぞ驚いたのだろう、きょろきょろと不振に辺りを見回
してから手紙を開いて目を通してから、田島のほうへ視線を
やった。それからシャーペンを手にとって何か書いてから、も
うくしゃくしゃだった紙をまたくしゃくしゃにして投げ返してきた。
（かえってきた）
自分が書いた文字の下に女の子らしい丁寧な文字で返事が
かかれていた。
（よく気づいたね、視力悪くなっちゃってさ）
それからまた、綺麗ともいえない文字で返事を書いてから、
先生の目をぬすんで名前へ投げる。勿論今度もしっかりと届
いた。
（だっておれ苗字のことすきだもん、だからふつーに気づくよゲンミツに！）
名前はちらりと田島のほうに目をやったが、書いた本人は
いつもの笑顔を浮かべて返事を待っているようだった。
（あたしも好きだよ！みんな好きだよ！）
紙が返ってくると急いで開くが、どうやら名前は好きの意味を
勘違いしているようで、田島の期待した答えとはかけ離れ
た物がかえってきたのだった。どうすれば気づいてもらえ
るのか、授業そっちの気で考えていた。するといきなり頭を
パコンとたたかれた。
「いって、あ、なにすんだよシガポ！」
「いやあ、珍しく田島がおきてると思ったら原因はこれかあ」
シガポはニヤニヤと手紙を見ていた。たたかれた本人は
邪魔されたと思っているため、ぶすっつらを決め込んでい
たのだがそれもシガポの次の言葉によって消えた。
「今日の放課後田島と、それから苗字は職員室においで」
「えーっ、なんでー！それじゃあ部活できねーじゃん！」
「あたしまで！？」
名前の名前があがったことに疑問を持った名前の友達が名前に
聞いてる様子が伺える。
「うーん、好きなのもわかるけどね、今は授業中だから」
じゃあこれは没収、職員室に来た時返すよ、シガポはそれ
からまた授業を続けた。
お嬢さんの変化にはすぐに気がつく田島少年 09/09/25 ＠ ぱこ
←
携帯モード]
[
URL送信]
太陽の子 ぜろろく