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ぜろに
            太陽の子 ぜろに

               青空に綺麗な弧を描いて高く飛んでいく白球、それを追いか
               ける少年たち。否、もう少年じゃなくて、青年なのかな?まあ、
               いいや。とにかく監督自ら打って打って打ちまくっている、こ
               の状況を見たら、きっと"この監督まじで女ですか?"と言い
               たくなる事間違いないだろう。





               「千代ちゃーん、こっちは準備完了だよ」

               「ありがとう、名前ちゃん。じゃあ、草取りに行ってくるね」

               「あたしやろうか?草大好きだし、千代ちゃん大変だし」

               「(名前ちゃん、草好きなんだ)ううん、大丈夫だよ」





               千代はそう言って、帽子と軍手、それからタオルを持って草
               取りへ向かう。何故か、この名前とまともに対話することの出
               来る人物である千代であった。ちなみに他には、田島と三橋
               も何故か対話できる人物である。まあこの2人はなんとなくわ
               かる気もするが…。だって同じ感じがするじゃあないですか、
               同じにおいというかなんと言うか。





               「名前ちゃん」

               「はい、なんでしょうか監督!」

               「言うの忘れちゃってたんだけど、ちょっと買い物頼まれてくれないかな?」

               「任せてください!おつかいですね、あたしおつかい得意です
                よ!初めてのおつかいとかもすきです!」





               監督とは少し話がズレてきているが、あえてそこに触れない
               のがモモカン流なのであり、そのまま名前を買い物に行かせた。
               もしかして、一番手馴れているのはモモカンなのかもしれない
               というのが浮上してきたが、コツをつかめば楽よなんていう回
               答が返ってくると少し悲しくなってくるのでやめる。





               「初めてのおつかいでもないけど、楽しみだわー」





               モモカンに頼まれた物をしっかりとメモし、近くのスーパーや
               らなんやらを回りに回る。やっぱりカメラさんはいないよね、
               なんて途中気落ちもしたが名前だからすぐに回復。いや、名前
               だからっていう理由が少しおかしいのだけれども、そこは
               あえてのスルーでいくことにしよう。





               「アクエリ求めて三千里、帰りにジュースでも買っちゃおうかな」





               アクエリにかけて、創世のアクエリオンの曲を歌いだす名前。
               一時期パチンコのCMでブームを呼んだ、あの結構有名な
               曲だ。名前的には残酷な天使のテーゼ派なのだが、仕方な
               いここはアクエリにかけてだ。





               「一億年と二千年前から愛してぐひゃっ」





               気分よく歌っていたら何者かに邪魔された名前。否、邪魔され
               たというよりぶつかったというのが正しいだろう。名前も名前で、
               浸っていたから周りが見えず人に反応することができなかっ
               た。





               「いってえ、」

               「あ、すみません」





               それでも名前のことだから、そこまで気にしない。相手の人が
               いくら目つきが悪くても気にしない。そしてそのまま横を通り
               すぎて、お目当ての物を買いに行けばよかった、というかま
               ず大体ぶつからなければよかった、という悔いが残る。





               「すみませんですむかよ、肩怪我したらどうすんだよ」

               「怪我もなにも、あたし身長低いから何もないと思うんですけど」

               「………、いやだからって何事もなかったように横を通り過ぎていくなって」

               「あたし急いでるんです、初めてのおつかいやってるんです、はじめてっていうわけでもないけどソレっぽい
                ことやってるんです。だから成功させて皆に喜んで欲しいんです、ってことでこんなところで時間を使うわけにはいかないんですよ」





               名前は対抗してみた、名前なりに対抗してみた。けれども相手も
               一歩も引く気がなくて、道のど真ん中でお互いじーっと睨み
               あっていた。他の通行人からしてみれば、只単に邪魔なだ
               けなので、終わるなら早く終わらせてくれ程度にしか思って
               いなかった。





               「……あれ、もしかして武蔵野第一の人ですか?」

               「そーだけど」

               「…違ってたら失礼だと思うんですけど、もしかしてハルナさんですか?」

               「何で俺のことしってんだよ」

               「あー、やっぱり」

               「俺の質問は無視か!」





               名前の中ではもっとかわいらしい人を想像していた。だって、
               ハルナなんて女の子っぽいじゃないか、会ったこともこれが
               初めてだし、見たこともなく、只阿部君や栄口君の会話にち
               ょこまかとその名前がでていたことをふと思い出したのだ。





               「ハルナって可愛い名前してるんですね、男の子なのに。苗字はなんていうんですか?」

               「馬鹿か、ハルナは名前じゃねえよ、苗字だよ」

               「そうだったんですかっ、てっきり名前だと…いや、可愛い名前だなあって思ってたのに」





               今の名前にはおつかいのことなど忘れていた。只、ハルナと
               いうのが名前ではなく苗字だったということにショックを隠し
               きれないようで、すごく落ち込んでいた。それは見てわかる
               ことで、本人の榛名にとってはいい迷惑なだけであった。





               「というか、何でお前が俺のこと知ってるわけよ」

               「阿部君が話してるのをちょっと小耳にはさんだだけでございまして」





               事実だ。名前は事実を述べた、確かに阿部君はシニア時代
               に組んでいた投手がノーコンだとか、どうだとか色々と話し
               ていたのを聞いたことがある。そのときにハルナっていう名
               前がでていたから、名前の頭の中の小さいな細胞たちをフル
               に活用して、ようやくしぼり出した答えが、"阿部君がシニア
               時代に組んでいた投手はハルナさんというらしくとてもノーコ
               ンのようだ。"である。





               「阿部君って、阿部隆也のことか?」

               「何で阿部君のこと知ってるんですか!って、シニア時代確かバッテリー組んでたんですよね、そうかそうか」

               「いや、だから阿部隆也のことかって聞いたんだけど、まあいいや」

               「そうですよ、阿部隆也」

               「お前ちょっとズレてねえ?ってことはお前も西浦?」

               「そーですよ、野球部のマネやってます。なので早く買い物に行きたいです」

               「そーいやそうだったな、悪いな引き止めて」

               「いや、目的の物が買えれば別にいいんですけど」





               そいじゃあ、失礼しますねと言って今度こそお店の中に入っ
               てやろうと思ったのに、またもやとめられてしまった。あんた
               さっき引き止めて悪いって言ったばっかじゃないですか、とも
               言わなかったけれども少し迷惑そうな表情をしてやった名前。





               「そんな顔すんなって、最後最後」

               「手短にお願いしますよ」

               「アドレス教えろよ、っていうか強制な」





               拒否権もなかったので名前はしぶしぶと交換した。何の意味が
               あるのだろうかと思ったが、アドレス張にまた新しいアドレス
               が増えたので少し嬉しくなった名前。それから榛名と別れて目
               的の物を買って、帰り道は何事もなく無事、学校までたどり
               着いた。





               「遅かったな」

               「途中で人に会ってさ、ほら阿部君が前に言ってたハルナさんって言う人」

               「あいつに会ったのかよ!なんもされなかったか!」

               「うん、アドレス交換しただけ、あとねハルナって名前じゃなくって苗字なんだね」





               別に阿部君にとっては榛名が名前だろうが苗字だろが別に
               どっちでもよかった、むしろそんなこと自分に何も関係ない、
               というよりその前のアドレスを交換したという言葉がどうして
               もつっかかって仕方がない、こんなことならこいつを一人で
               行かせるんじゃなかった、と後悔後悔の嵐。





               「いいか、俺の言うことよく聞け」

               「な、なんで、っていうか阿部君いきなりどうしたのさ」

               「いいから、次のテストで0点取りたくなかったら俺の言うことよく聞けよ」

               「0点はいやだ!聞く聞く、阿部君の言うこと超聞く!」

               「その榛名のアドレスは今すぐ消せ、それかメールも電話もでるな」





               どうして、と聞き返そうとした名前だったが、その前に阿部君
               に0点とりたくないよな?と言われてしまったので何も言え
               なかった。結局は友達が一人減ってしまうみたいなのが嫌
               だったので、アドレスは消さなかった。これからの阿部君の
               監視がとても怖い。















               阿部君はお嬢さんが好き   

               参考:創世のアクエリオン、残酷な天使のテーゼ(エヴァンゲリオン)
               間違ってたらごめんなさい                         09/09/14 @ぱこ
















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