阿部 名前、今日やらかしてしまいました。








　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　行け、俺ら！

只今の時刻6:30です。ヤバイ、これは完全なる遅刻
だ！と気づいたのはその5分後の事、二度寝しちゃった
せいで5分遅れました。ってことなんで、今は6:35です
ね。どっちにしろヤバイです。朝練遅刻は確定なんだ
けど、此処から"いかに時間を短縮して、オーバーした
時間を減らせるか"がポイントになってくるんですよ
っ！当たり前だけど、隆也には置いていかれました。






「お母さん、今日あたし朝御飯いらないからっ！」






お母さんは毎日のことに厭きれながらも、朝早く起き
て作ってくれたお弁当を手渡してくれた。あたし、将
来お母さんみたいに、こんなに早く起きれる自信が、
全くと言っていい程無いって、命賭ける！独り暮らし
とかした時とか大丈夫かな？




「姉ちゃん今出んの？」

「シュン、今急いでるから、後でネ」






玄関へ俊足で向かっていれば、丁度二階から降りてき
た、弟のシュンに会った。ごめんよ、姉ちゃん今急い
でるんだ！頼むからモモカンのグリグリだけは、死ん
でも避けたい！あ、でもでも、死んだら野球できない
から、やっぱ死にたくない！でも、死ぬ気で頑張らな
いときっと間に合わない！





「いってきますっ！」

「いってらっしゃーい (朝から忙しい子だわ)」





スカートとか髪とか、この時だけは女を捨てたよあた
し！後ろからお母さんとシュンが、「どうして隆也は
ちゃんと時間通りに出て行ったのに」「姉ちゃんは起
きれないんだろうね」「「双子なのにね」」なーんて
いう、軽くあたしを貶した会話をしているなんて、気
づくわけも無い。





「やったぁっ、最短記録っ！」

「やっと来たか」

「おはよ花井！聞いてよ、途中事故にあわない程度
　に、頑張ってきたよ！」





今までの最短記録を上回る記録が出た、っていうすが
すがしさと共に、グラウンド入りしたら、花井が待ち
構えてて、今日の報告をした。報告って言っても何に
も無いんだけどね…






「お前なあ、事故にあわない程度ってなんだよ」

「え、そのままの意味なんだけど、だって事故にあっ
　ちゃったら野球できなくなっちゃうでしょ？ そんな
　の耐えられないじゃん」







あたしは自分の思ったことを、ただ述べただけなの
に、何でか花井にはでっかぁい溜息をつかれた。溜息
つくと幸せにげるんだよ、って言ってあげたら、とっ
くのとうに逃げてるって言われた。







「だよなっ、やっぱ野球できねーとつまんねーよなっ」

「でしょでしょー！ やっぱ悠は分かってくれる！」








悠こと田島悠一郎は、あたしと同じクラスで、結構気
が合ういい奴！ 打ってほしい時とかに一発やってくれ
るし、野球のセンスもめちゃくちゃいい！ この前隆也
に、悠に甲子園連れてってやるって言われた、って言
ったら今後あんま関わんなって言われたけど、やっぱ
いい奴だからそんなの無理！





「つうか、篠岡に任せっきりでいいのかよ」

「(忘れてた！) はぅぁっ！ やっばい、千代ちゃーん
　ゴメンね！」





花井に言われて思い出したよ、ごめんね千代ちゃん、
忘れてたことと任せっきりにしちゃったこと！ まあい
ろいろっ！ そのまま走って千代ちゃんのところに行こ
うとしたら、悠が腕掴んでて進めなかった。





「どーしたの？」

「なっ、俺、絶対に甲子園連れてくからっ！」





悠の笑顔はまぶしいけど、結構好きだっていうカミン
グアウト。悠がこの言葉を言うと、本気で連れて行っ
てくれそうな気がして、物凄くドキドキするし、ワク
ワクする。全身の血が騒ぐ感じ？







「約束ね、絶対ね！」

「だって俺、どんな球でも打っちゃうもんねー」







そーさ、そーさ、悠はどんな球でも打っちゃうんだ
よ！ 行けるよ甲子園！ ヤバイよ、ヤバイよ、本当に
行けちゃうよ！隣で花井が"会話がかみ合ってねー"と
か、ほざいてたけど気にしない！





「千代ちゃーん！」

「名前ちゃん！ おはよう」

「お、おはよっ！ 任せっきりにしちゃってごめんね」





そしたら全然大丈夫だよ、って千代ちゃんが言ったか
ら、大丈夫なんだ！って思った。ホラ、花井! 千代ち
ゃん大丈夫だよって言ってるじゃん！ って叫ぼうと思
ったけど、練習してたからヤメタ。あたしだってその
場の空気ぐらいは読めるよ！ ＫＹってヤツだよ！












(千代ちゃーん)(名前ちゃーん)((疲れたねー))
















title by 蒼灰十字