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愛の絆(彼氏よりドラマか!)(え、これドラマじゃないよ、トトロだよ)











     
 





     「ねーねーねー、色違いでてきた!…って、聞いてるわけ?」
     「あー、ちょっと待って今めちゃくちゃいいところだから!」
     「(彼氏よりドラマか!)」


     稲城実業野球部寮の一室ではそんなやり取りが行われていた。扉にはエースの部屋とかかれた
     プレートがかけられているこの部屋。ここの部屋主の機嫌は、たった今悪くなったようだ。


     「旬君かっこいーもう超やばーい!DVD発売されたら絶対買おうー」
     「(旬君とか誰だよ、今人気の俳優かなんかなわけ?彼氏の目の前でそーいうこと言っちゃうわけ?)」


     鳴はふてくされて、またゲームのほうへ目をやった。先ほどの色違いモンスターには逃げられてしま
     った。ボールもハイパーがあと少ししかなかったので、どっちにしろ無理だったしいいやと開きなおっ
     た。マスターは他の伝説のモンスターに使ってしまったため、残ってはいない。


     「あ、そういえばなんだっけ?鳴さっきなんか言ってたじゃん」
     「もーいいよ逃げられちゃったし(おそいんだよーっ)」
     「むぅ、せっかく聞いてあげたのにその態度はないじゃんか!」


     すると次の瞬間、ぼはっと枕が飛んできた。それはさっきまで名前が抱えていた物だった。いきなりのこ
     とに、もろ受けてしまった鳴は衝撃とともにベッドに倒れこんだ。その衝撃で先ほどまでやっていたゲ
     ーム機も軽く吹き飛ばされてしまった。


     「なにすんだよっ!(ゲームこわれたらどーすんの)」
     「もう鳴なんて知らないもんねーっ!ゲームでもなんでもしてろ!」
     「それはこっちのセリフだっつーの!彼氏目の前にして旬君かっこいーとかいいやがってー!」


     2人の間にバチバチと火花が散る。もうゲーム機のことなんてどうでもよかったけれども、しんとした部屋
     に鳴り響く聞き覚えのあるBGM。きっとゲームのBGMであることから無事だったと思われる。


     「いいよもう!あたし雅さんとこいってくるもん!」
     「勝手にすればいいじゃんか!」


     すると名前は鳴のバカと言い残して勢いよくドアをしめた。その衝撃でプレートがゆれてコツンという音がドア
     の向こう側から聞こえてくる。部屋にはいまだにあのBGM。


     「名前なんて知らない、知らない。どーなったって知らない」


     鳴はそう言ってまたゲーム機に手を伸ばした。だけど、自転車に切り替える気力も、野生のモンスターと戦う
     気力もなかった。続ける気力もなかったのでレポートも書かずに電源を切った。


     「(つまんないつまんないつまんないつまんなーいっ!)」


     ゲームのほかに何もやる気になれなかったので、とりあえずベッドに寝っころがってみた。さっきの衝撃とは
     全然違うポスンという音。じーっと天井の一点を見つめてみるけど何も思い浮かばないし、磨かれたボール
     に手を伸ばしてみたけれども、やっぱり何もする気にはなれなかった。


     「つまんない…」


     気分の切り替えも含め、その辺をぶらぶらすることにした。きっと名前の捜索も混じっていることだろう。ぶらぶ
     らとし始めて少し経った頃、見覚えのある姿を見つけた。


     「なんだ、雅さんとこいってねーじゃん」
     「鳴」


     うずくまり小さくなっている名前を見つけたのだ。さっきまで張り詰めていた物が急にふにゃあとゆるくなった。
     なにがともあれ、結局は名前が心配だったのだ。


     「ごめん、あたしちょっと言いすぎた。枕も投げちゃったし…鳴は稲実のエースなのに」


     もともと小さかった名前がもっと小さくなっている。どうやらずっと反省していたようで、鳴のほうもさっきまでの
     名前なんて知らない、なんて言葉も忘れてしまったようだ。


     「ほんとごめんね」
     「(かなりへこんでる)部屋、もどろ」


     そう言って鳴は小さくなっている名前に手を差し出す。結局のところ、2人は仲直りしたということで!



(彼氏よりドラマか!)(え、これドラマじゃないよ、トトロだよ)



 
     




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