[携帯モード] [URL送信]
.後輩と射手座寮


星月学園天文科2年。
無事に誰にもばれる事なく編入出来た訳だけど、流石専門的なカリキュラムだけあって全寮制でしかも各星座によって分けられているらしい。

「あ、待って相川くん」

呼び止められた。透き通る声は実に女の子らしくてこれは男からしたらもう……色々やばいんじゃないかな。
もちろん夜久さんだった。ていうか、私より背が大きかったんだ。

「あのね、寮の事なんだけどね。私の後輩が相川くんと一緒だから──」

「夜久先輩」

遮られた。声がした方を見れば小柄な男子。夜久さんの表情が少し明るくなったと思ったらいつの間にか小走りでその彼の方へ行ってしまった。少し会話した後手招きされる。全く状況が理解出来ない。その男子は何?夜久さん説明してください。

「さっき話してた後輩の梓くんだよ」

ああ、さっきの。納得しながら見上げる。やっぱり私よりでかいわけでなんとなくムカつく。ていうか綺麗な子だ。思わず見惚れてしまう。男子でパッツンが似合う子はなかなか……

「……相川先輩、でしたっけ?」

「え、うん?」

「今日、部活があるので早く済ませたいんですけど」

はっと我に返る。見とれてた自分が恥ずかしくなる。はあ、と息を吐いたその動作がなんとなく気にくわなくて少しむっとする。なんだこの生意気な後輩は。こういう奴が一番嫌いというか、苦手。

「じゃあ早く部活いけよ」

ムカつくムカつくイライライライラ。一応私が先輩だよね?爽やかな笑顔とか出来ないの?明らかに夜久さんとの態度が違う目の前のパッツンを睨むと、少し驚いた表情を向けられた。

「へぇ、相川…、那智先輩って可愛い反応するんですね」

「か、かわっ!?」

あれ?なんか昇格してる?それに男にかわいいって…!いや、女だけどさ!

「冗談ですよ、ちゃんと案内します」

今度はちゃんとした爽やかな笑顔を向けられる。もしかして私、からかわれた?首を傾げてちらっと見れば微笑を溢した。やっぱり綺麗な顔…。私は小さく息を吐いた。




「ちなみに僕の部屋はあそこなんで何かあったらいつでもどうぞ」

一通り場所の説明を終えた梓は等間隔に並ぶ部屋の一つを指した。首を傾げると食事の時にでも呼んでください、と微笑して部屋に戻っていった。意外にいい奴だなあ。てっきり夜久さんが好きで嫉妬しているのかと思ったのに。
カチャリ、ドアノブを回して部屋に入れば既に綺麗になっていた。必要な物は全部そろっていて、特に何もする事がない状態。クローゼットを開けば男物の服。やっぱり私が持っていた可愛いワンピースとかはなくて少しため息を零す。でもちゃんと部屋には鍵が付いていて、安全面は大丈夫みたい。時計を見ればもう夕方。なんとなく一人で食堂に向かう気にはなれなくて、シャワーを浴びることにした。
…このまま行けば無事に卒業できそうだ。






第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!