明けない夜が来る
×幸村と真田
その日は朝からうざったいくらいの晴天で、全てを明るく照らしていた。俺にとってそれが死にたいくらい苦痛で、この世界を燃えるような色に染めるなどと悪趣味な、冒涜に近いのだそんなこと。他人の吐く気体が気持ち悪くて俺は息をするのをやめた。でもそんなの長く続かなくて苦しくて、結局俺はその嫌悪する気体を肺一杯に吸い込んだ。
「・・・いたい、」
「痛いよ、真田」
「苦しくて、死んじゃいそうだよ」
「…助けてよ、」
「…幸村」
真田は顔色一つ変えないで俺の手をそっと握ってきた。お前それちゃんと俺の気持ち分かってやってんの?俺がどれ程の苦しさに耐えてるか知っててやってんの?どうせ分からないからとりあえずやってるんだろ。ゴツいけどきちんと爪が切り揃えられている真田の指先が俺の骨をなぞる。まるで慈しむかのように優しく、丁寧に。
「やめろよ、」
「…幸村」
「何も分からないくせに、そういうのやめてくれよ」
「…すまん」
「別に謝らなくてもいい」
「…すまん」
ああそういう悲しい顔しないでよ、別にお前が悪いんじゃないんだ。汚いこの世界が悪いんだよ、八つ当たりなんかじゃない。でもね、お前の悲しい顔見てるととても腹が立ってくるんだ、こう、殴り潰してやりたくなる。どうせ大して悲しくもないのに俺に気を使ってそんな顔してくれるんだろ?真田は優しいなぁ、俺もそんな風になれればよかった。
「幸村は、」
「え?」
「お前は、どうしてそんなに泣きそうな顔をしているんだ」
「何が?」
「お前は、死ぬ事が怖いのだろう?」
予想もしなかった真田の言葉は俺の心臓に重く響いた。
俺が、死を恐れるなんて、そんなことあって堪るか。
「・・・・馬鹿じゃないのか?俺が怖いなんて、あるはずないじゃない」
「だが、」
「うるさいよ」
「幸村」
「俺は死なない、神様が死なせるもんか」
俺はただ、僻んでいた。真田の力強い指が羨ましいのだ、生命力に溢れたその手が。弾むように脈打つ彼の血液を想像しただけで悲しくなる、自分のひ弱な体と比較してしまって。
他人が普通に生きて呼吸をしていることが酷く羨ましかった、彼等を照らす太陽が憎かった。まるで世界は俺を拒んでいるかのように感じたんだ。俺はもういらないよ、早く死んでしまえって言われてるようで、だからから拒んだ。
「………最低だ」
最悪だ。
それは俺が弱いから、
(いつになれば、素直になれる?)
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