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その美しい赤に、僕はきっと感涙する。

×仁王と柳







俺は時々無性に悲しくなります。

まるで世界には俺一人しか居ないんじゃないかと錯覚することがあります。


自分は望まれて産まれてきたはずなのに、どうしてここに居るのだろうと自分の存在を否定したくてしょうがないのです。



今、すぐそこにあるカッターを手に取って、この左手首をなぞれば赤い血が出ます。それは人間であるという証拠、俺を安心させるでしょう。でも俺はカッターを手にすることはありません。何故なら臆病だから。痛いのが嫌いな俺は、自分の手首から流れるであろう赤を恐れるのです。流れる赤をただただ見ていたら、きっと俺は狂ってしまう、その先に待つものが怖いのです。


















こんな事を思っていたのが半年前。

初めて手首を切ったのが4ヶ月前。

リストバンドを外さなくなったのもこの頃。

手首を切るのが癖になったのが1ヶ月前。

カッターを肌身離さず持つ様になったのが2週間前。












今では余裕で学校で切れるんよ?と言ってもバレたら色々めんどいから人の居ない便所とか屋上でじゃけど。
俺がリストカッターなのは誰も知らん。それはあの糞監督が着用を命じたパワーアンクルのお陰。これをしとる限りばれることは恐らく無い。でもその重みの下は切って切って切りまくった傷でいっぱい。これ結構エグイと思う。きっとジャッカル辺りが見たら思わず目逸らすじゃろ。でも俺自身、もう痛いとか感じんし。それに結構スリルがあって面白い。調度良い暇潰し







な筈じゃったんじゃけど、

「…何じゃ、参謀」
「いいから見せてみろ」
「何を」
「お前の右手首をだ」


あああああ、ちょっとちょっと待って、俺の右手首に参謀の右手が触れとる。参謀の手が綺麗でちょっと見入ってしもうたとかそんなん今はどうでもよか。嗚呼、俺の、俺の右手が危ない。参謀の手によって暴かれようとしちょる。
やめて、




「……やっぱりな」


俺の必死の抵抗も虚しく、俺の右手首を覆っていたパワーリストは参謀の手によってあっさりと奪われた。改めて見ると我ながら酷いなと思った。痂が出来る前に切っとったせいでグチョグチョになってた、なんかよく分からんけど俺イタイ子なんかなーとか思ってみたり。参謀はこれ見て引かないんか。





「どうして切った?」
「…わからん」
「理由があるはずだろう」
「…わからん言うとるじゃろ」
「仁王」
「……」
「お前は本当に馬鹿だな」
「、」
「こんなことをしても誰も報われない。お前自身を傷つけたところで一体何が変わる?お前は自分の中にある闇が怖いのだろう。予想以上に大きくなった負が。それから逃れようとしているのだろう。だが、それも叶わないだろうが」
「……嗚呼、」




そう言うと参謀は俺の右手首の傷口をその細長い指でなぞった。俺にはそれが悪魔からの口付けのように感じて思わず振り払った。俺はお前が怖い、何もかも見透かしてるようなこの視線に耐えられない。右手の傷口がジクジクと疼き出す、左手はポケットの中へ滑り込み冷たい感触を探し出す。なぁ参謀、今目の前で頚動脈を引き裂いたらお前さんはどんな顔するんじゃろ?










張り詰めた糸に滴る







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