「もう外していいデスカ?」

「ダメ」

満足げに俺の姿を眺める大将を見て、ため息を吐いた。
今俺には茶色の毛並みの獣耳、それとお揃いの尻尾がくっつけられている。大将が言うには、狼をモチーフにしているんだそうだ。
家に来る前に、街中で売ってるのを見かけて、買ってきたらしい。

「やっぱ似合うなー。でも少尉は狼っていうより犬っぽいかも」

ケタケタと笑う大将に、「そうッスか…」と適当に答えて軽く流す。
大将はおおいに楽しそうだが、俺は全く楽しくない。例えばこの獣耳が大将に付いていたら、どれだけいいことか。一般的な萌アイテムという物でも、自分が付けた姿を見せられると、気持ち悪さしかもたらさない。
俺の姿をいろんな角度から観察する大将は、いったい何がそんなに楽しいんだか…

「少尉、お手!」

ビシッと出された手に、「はいはい」と手を乗せれば、「やっぱり犬だ」とまたはしゃぐ。
この様子だと、当分解放してくれなさそうだ。
こうなりゃ強行手段といきますかね。
グイッと手を引っ張り、そのままベッドへと押し倒す。

「あんまり犬だ犬だって油断してると、隠れてた狼に食べられちまうぞ、子猫ちゃん?」

ニヤリと笑えば、エドの手が俺の頭へと伸び獣耳を掴む。
何をするのかと思えば、そのまま自分の頭へと付ける。

「にゃーお」

それは反則だろ。ヤバい。可愛い。
鼻血が出るかもと顔を抑えると、スルリと猫のように俺の下から逃げていく。

「これくらいで動揺するようじゃまだまだだな」

ニシシとイタズラが成功したと意地悪く笑う。
俺が本物の狼だとしても、この猫には一生勝てそうになさそうだ。



Fin




あきゅろす。
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