「大将…」
「ん?なんだよ?」
司令部の中庭、休憩中の俺の隣で寝そべっている大将に声をかければ、よっと掛け声を出しながら体を起こす。背中や頭にはたくさん草がくっ付いていて、苦笑しながら払ってやれば、サンキューと無邪気な笑顔を見せる。
「大将ってさ…俺のどこが好きなんだ?」
顔も地位も俺よりいいやつなんてたくさんいる。それに何より俺は男で、大将も男。
大将くらいの年なら異性に興味がないという訳じゃないだろう。男しか好きになれないとかじゃ話は違うが、そういう訳でもない。
自分でいうのも悲しいが、俺のどこがいいのかわからない。
もしかしたら俺が告白したから仕方なく付き合ってくれてるんじゃないか、とかそんな事を考えちまって、勝手に一人で凹んだ。
「そういう少尉はオレのどこが好きなんだよ?」
「俺か?たくさんあるけど…大将はな、強いのに脆いところもあって、見てないと何しでかすかわかんなくて、できるならずっと見守ってやりたいって思えるんだ。それに大将の笑顔見るとすげぇ幸せだなって思える」
こうやって隣にいてくれるだけで、心が満たされる。
俺の答えを聞いてふんわりと笑った横顔に、ドキッとした。
「オレはあの空みたいな少尉が好き」
指差す先にあるのは晴れ渡った青空。
太陽の光が眩しくて、手で影を作る。
「大きくて全てを優しく包んでくれる。昼の太陽は体を暖めてくれて、夜の月は暗闇を照らす。意識しなくても変わらず上を向けばあって、励ましたり、時には叱咤してくれる存在」
「俺はそんなに凄くねえよ。買い被り過ぎだろ」
「そうかな?」
「そうだよ」
「本人がそう言うならそうかもな」
ははっと笑いまた空を見上げる大将につられるように、俺も空を見上げた。
あぁ、幸せだ。
そう思えた、ある日の昼下がり。
Fin
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