強姦的な要素が入っています。
苦手な方はご注意を!
あれから結局あのまま少尉の家でお世話になっている。一度は出て行こうとしたが、少尉が「金が勿体無い」からと引き止めてくれたからだ。
それからは少しでも恩返しできるように、家事全般はオレがこなした。
オレの作った料理をあまりに誉めてくれるものだから、次の日は調子に乗ってかなりの量を作ってしまい、「俺は大食い選手」かと言われた。それでも少尉は全部食べてくれて、二人で食べ過ぎでお腹が苦しいと笑いあった。
少尉が休みの日には部屋の大掃除。確実にゴミであるものは捨てたが、他はわからないので、少尉に分けてもらいながらせっせっと片付けた。
本当はタバコで黄ばんでしまった壁も綺麗にしたかったが、資金もなくどうせまた汚れるからと言われ断念。
それでもいらない物が減っただけでかなり部屋がすっきりした。
一人で買い物にも出掛けた。流石にそろそろ服や下着を揃えなきゃと思い、何着か買ってみたが、初めてのブラジャーは何だか窮屈で、違和感が消えない。
服も何を買えばいいのかわからず全て店員さんに見立ててもらった。
買い物が終わってから財布の中身を確認すれば、結構な額が減っていて、おしゃれには金が掛かると思い、ため息を吐く。
それでも可愛いと誉められば嬉しくなって、夜勤明けの少尉を巻き込んでファッシンショーの如く服を見せたが、きっと疲れていたに違いない。悪いことをした。
夜はいつも一緒のベットで寝ていた。最初は我慢できなくなるとか言っていたのに、寝る時少尉は優しく抱きしめてくれて、他には何もしなかった。
少尉の腕の中は凄く心地良くて、安心できる。
偶に少尉が夜中に起きてトイレに籠もっているのは気付いたが、胸の中で謝って見て見ぬ振りをしておいた。
あれから一週間。意外と早く経ってしまった。
馴染みの服とコートに腕を通し、少尉と一緒に司令部に向かう。
まだ心は痛むけど、もう気持ちに整理はついた。
途中で少尉とは別れ、一人で大佐の執務室の前の扉に佇む。
大丈夫。
自分にそう言い聞かせ、深呼吸を一つ。新鮮な空気を吸い、いざ扉を開いた。
「待っていたよ、鋼の」
まるで一週間前の出来事が嘘だったかのような、穏やかな笑顔。
座るように促され、ソファにコートを掛け腰を下ろす。
「この書類にサインすれば君は鋼の錬金術師ではなくなる。後戻りはできない。よく考えたまえ」
考える必要はない。
万年筆を出しEdward Elricとサインする。
これでもうオレは自由の身だ。
「迷いはないみたいだね」
オレのサイン入りの書類を封筒に入れ、机の上に置く。
「お世話になりました」
礼儀的に頭を軽く下げ帰ろうとすれば、オレより先に大佐がオレのコートを奪い取った。
返せと言って睨みつけるが、大佐は少しくらいは話に付き合えと、胡散臭い笑顔を浮かべる。
「最近ハボックと同棲を始めたらしいね。この間まで私のことが好きだと言っていた割りには、移り身が早いじゃないか」
ニヤニヤと話し出すその姿は実に楽しそうで腹が立つ。
久々にいい玩具を手に入れたといった風だ。
「ハボックとはもうヤったんだろ?私とどっちが気持ち良かった?」
「なっ!?少尉とはそんな関係じゃない!」
どういう関係かと聞かればうまく答えられないが、少なくとも大佐みたいに体だけでいいとかそんな関係ではない。
「なんだまだヤってないのか。それなら君もご無沙汰だろ?相手をしてもらおうかな」
「は?……ッ」
何言ってんだと言うよりも先に、ソファに突き飛ばされ、両手を上で掴まれソファに縫い付けられる。
「おや?ブラジャーを付けるようになったんだね」
服を捲りオレの胸を露わにして、珍しいものを見つけたといった感じに観察する。
「なかなか可愛いじゃないか」
にやけた顔をしながらブラジャーを上へずらし、胸を揉みだす。
もう大佐とヤりたくなんかないのに、今まで何回も重ねた体が勝手に反応する。
「んっ…触る、な‥ッ」
抜け出したいのに力が上手く入らなくて、抵抗してもなんの意味もない。こんな時まだ機械鎧だったら、少しはマシな抵抗ができたかもしれないと、無くなった機械鎧が欲しくなる。
「嫌だと言う割にはしっかり反応しているじゃないか」
ぷっくりと膨れた乳首を吸われ、びくりと体が跳ね上がる。
男と女、大人と子供の力の差を見せつけられ悔しいのに、大佐の愛撫に感じてしまう体が嫌だ。
大佐は片手でオレの動きを拘束しながら、器用にオレのベルトを外し、そのベルトでオレの手を縛る。
下着の上から撫でられた秘部からは、くちゅりと水音を立ち、背筋がぞくりとする。もしかしたら…と有り得ないで有ろうことに、心の隅で期待している自分がいることが、情けなくて涙が出た。
大佐が自分に好意を持っている訳がない。持っているならこんな強姦のようなことはしないはずだ。
「考えごととは随分余裕があるようだね」
オレが考えごとをしていたのが気にくわないのか、少し苛立ちを含めながら言い、オレの中を遠慮無く掻き回していた指を抜き、指よりずっと熱くて質量の大きいものを中に押し込んでくる。
感じからしてゴムはしていない。いつもなら大丈夫だと言っても欠かさずしていたのにだ。もうオレが妊娠しようが関係ないということだろうか。最低な奴だ。
オレの負担なんてお構いなしに、腰をガンガン打ちつけてくるこれは、セックスというより交尾という方がしっくりくる。
「君がいいのはここだったね」
遠慮の無い動きに頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなってくる。
今大声を出せば、誰かが助けに来てくれるかもしれない。だけどこんな姿を誰かに見られたくない(大佐ならオレが大声を出す前に口を塞ぐだろうから、結局は助けを呼べなかっただろうが)。
「イくぞ………クッ…」
「やっ、あ、あァあッ!」
中に熱いものが出されたのを感じながら、オレは意識を飛ばした。
意識が飛ぶ前に浮かんだのは、少尉の優しい笑った顔だった。
「んっ……」
目が覚めれば服は綺麗に整えられ、革張りのソファに寝かされていた。
ダルい体を起こせば、黙々と書類を片付けている大佐が視界に入る。
「目が覚めたかね。休みたいならゆっくりしていて構わんぞ」
さっきまで散々人の体を好き勝手にしていたのに、今更になって優しくしてくることが腹立たしい。
書類から目を離さない大佐を睨み付ける。
「この後オレが大佐にされたこと訴えたらどうなるかわかってんのか?」
「脅しのつもりかい?」
そこで漸く書類から目を離し、オレの方を見る。口元は不適に笑みを浮かべ、全く動揺なんてない。
「人体錬成は禁止されている。勿論軍属であろうが無かろうが関係ない。大切な弟を守りたいならどうするのが一番か…わかるだろ?」
そう、最初からオレは大佐に逆らうことなんてできなかったんだ。
握り締めた手に爪が食い込む。この拳を大佐に向けることができたなら、どれだけすっきりできるだろうか。
これ以上ここにいたら、本気で大佐に殴りかかりそうだ。用が済んだなら早く出るに限る。
「偶には顔を見せに来るといい。君ならまた相手をしてあげよう」
「二度と来ねえよ」
にやけた顔をしながら言う大佐を背中に、扉をバンッと荒っぽく閉め、ため息を一つ。
終わった。
もう大丈夫。涙は全て出し切った。
大佐への未練はない。
ここから全て再スタートだ。
少し遠くに見えた少尉の背中を見つけ、タンッと床を蹴って走り出した。
続く
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