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「最近煙草の量減ったよな」
「あー、気付いたか」
少尉の家のベッドに座り、足をぶらぶらさせながら言えば、少尉が苦笑しながら頭を掻く。
今も煙草をくわえてはいるが、火はつけていない。最近はいつもそうだ。
「喫煙でもするつもりか?」
「いーや」
首を振る変わりに、煙草を上下させる。てっきり体の為に禁煙を始めるつもりなのかと思ったが、どうやら違うらしい。
「違うんだ。いっそのことそのまま禁煙しちゃえば?」
「それは死刑宣告に近いものがあるな」
「オーバーだなー」
苦笑しながら返すが、ヘビースモーカーな少尉にとったら、本当に耐え難いような事なのだろう(オレにはさっぱり理解できないが)。
「大将って煙草好きか?」
「好きではないな。どっかと言えば嫌いな方」
突然の質問に、思ってるまま答える。
煙草は煙たいし、体にも良くないのは明白だ。今後吸うつもりもない。正直、少尉にも頑張って禁煙して欲しいくらいだ。
「やっぱりなー…」
オレの答えを聞いて、少尉がため息を吐きながら肩を落とす。オレの煙草嫌いがそんなに落ち込むような事だろうか。そもそもまだ吸える歳でもないのにだ。
「一緒に煙草吸って欲しかったとか?」
首を傾げてそう聞けば、少尉は「違う違う」と苦笑しながら雑誌を手に取り、パラパラとページを捲り、目当てのページで開いたままオレに雑誌を渡してきた。
「街角アンケート?」
見せられたページにはカラフルな文字でデカデカとそう書かれていた。街にいる女性からアンケートをとったものを、円グラフにまとめたといった感じの内容だ。
「これが何?」
急にこれを見せられても、少尉が何を言いたいのか全く分からない。
すると少尉が「ここ」と言いながら、多くの質問の中の人を指差し、とんとんと雑誌を叩く。
そこに書いてある記事の内容はこうだ。
Q.煙草を吸う人は好きですか?
YES 32%
NO 57%
どちらでもない 11%
YESの理由
・自分も吸っているから
・吸っている姿が格好いい
NOの理由
・煙たいし匂いが嫌い
・体に良くない
他にも色々と意見が載っているが、それは割愛しておく。
「圧倒的に嫌いの方が多いだろ?」
「そうみたいだな。健康意識が高まってるんじゃない?」
「理由は何であれ、思った通り大将も嫌いみたいだし…煙草が原因で恋人が嫌になったなんて話もあってさ…」
そこまで聞いて、これはもしかして…と少尉の喫煙の変化の理由が思い浮かぶ。
「もしかして、オレに嫌われたくなくて吸うの我慢してた?」
「…そうッスよ」
頬を少し赤らめ、オレから視線を外す。
その姿に思わず顔が緩んでしまった。
「馬鹿だな。そんな理由で嫌いになったりしないって。それに煙草は嫌いでも、煙草の匂いのする少尉は好きだしな」
にかっと笑ってそう言えば、少尉は嬉しそうな顔をして犬のようにオレに飛びついてきた。
オレといる為に好きな煙草を我慢してくれていた少尉。
そんな少尉が可愛くて、嬉しくて、また好きになたった。
Fin
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