.
「好きだ!付き合ってくれ!」

それは突然の出来事。
久々に司令部に帰って久しぶりと挨拶をした直後、ハボック少尉が近付いて来て、みんなの前で告白された。
ハボック少尉の笑顔と頭を撫でてくれる大きな手は、少し心地が良いとは思っていた。そこには恋愛感情なんて無かったし、強いて言うならば兄のような存在だった。
それが突然にこれだ。オレの頭は驚きで思考回路がストップし、少尉の勢いに押されてこう答えていた。

「え、あ、はい」

周りの驚いてる反応を見て、自分はとんでもない事をしでかしたんじゃと思った時には、時既に遅しだ。
オレの視界は青で一面になり、少尉がいつも吸っている煙草の匂いでいっぱいになった。頭上からは少尉のうかれた声も聞こえる。
こうやって抱き締められても嫌ではないし、よく考えなかった返事も、少尉ならいいかと思えたのは、前から心のどこかで惹かれていたのかもしれない。






彼のキスは煙草味






少尉に告白されてから二年近く経っただろうか(と言っても一緒に過ごした日数なんて、もしかしたら1ヶ月もないかもしれない)。
それでも少尉の告白でアルにも付き合ってる事が知れ渡ってるおかげで、司令部に来た時は少尉の家でお泊まりが恒例になっている。もしかしたら少尉のあの告白には、こういう事も考えた上での形だったんじゃないかと今更ながらに思う。
でもあの場に大佐がいなかったのは唯一の救いだ。知られてはいるが、直接告白されたところを見られるよりかは、精神的にダメージが少なくて済んだ(知られた後散々からかわれたりはしたが)。

少尉の部屋は実に散らかっている。不衛生という訳ではないが、物の整理ができておらず、床には雑誌や服が散らばっていて足の踏み場がない程だ。
その中にはエロ本も混ざっている。普通恋人が来る時くらいは、こういう雑誌は片付けておくべきじゃないんだろうか。男同士だからその辺の常識が通用するのかはよく分からんが…
適当に物を退かして床に座る。少尉はそのオレを挟むように足を伸ばし、オレの後ろに座る。この位置が少尉の定位置だ。座椅子の変わりになったりして楽だったりもするが、夏場は正直暑い(少尉曰わく、一緒にいる時は少しでも近くにいたいそうだ)。

「相変わらずボイン好きだな」

近場にあったエロ本を手に取りパラパラと捲れば、豊満な胸を強調するようなポーズをしながら何人もの美人なお姉さんが並んでいる。
その柔らかな部位はオレには存在しない。きっと一生手に入れることもできないだろう(手に入れる気もないが)。
こういう物を堂々と置いておくのはオレへの当て付けなんだろうか。確かにあまり相手はしてあげられないのは悪いとは思うが、お互い様で我慢くらいしてほしい。

「男でボインが嫌いな奴なんてそんなにいないだろ?」

「まぁそうかもしんないけどさ…オレにはこんな胸ないし」

少尉がボイン好きなのは知ってはいても、実際に写真に写ってる女性と比べると、少なからず自分はダメなんじゃないかと思える(女性と比べるのがまず間違いなのだとは思うが)。

「でも今はボインよりこっちの方が興奮するな」

少尉の手が服の中に侵入し、オレの乳首を指で刺激し始め、それと同時にオレの口から零れる甘ったるい声。自分の声なのに、まるで別人の声のように感じる。

「んっ…手つき‥ッ…やらしい…ぁ」

身を捩って軽く抵抗するも、この体制で勝てる訳もなくされるがままだ。

「ここ苦しそうだな。離れてる間自慰しなかったのか?」

少しの愛撫できつそうに持ち上がったズボンの上から自身を撫でられれば、体がビクッと跳ねあがる。

「し、て‥ない…んっ…」

「あんまり溜めとくと体に良くないぜ?」

カチャカチャとベルトが外され、ズボンと下着を一緒に下ろされれば、恥ずかしい程に反応している自身が姿を現す。
それを見ないように目線を逸らしていると、髪を解かれ、後ろ髪が肩へと流れた。

「せっかく溜めててくれたみたいだし、一緒にイくまで我慢な?」

「え?」

何をするかと思えば、少尉はさっき解いた髪ゴムで、オレ自身の根元を縛り付けた。
拘束されてる訳でもないのだから、取ろうと思えばいつでも取れる。だがその後何をされるか分からない(前セックスするのを拒んだら、少尉の前で自慰させられた。あんなことは二度とごめんだ)。
少尉は普段は優しいが、ヤる時はSっ気が強くなる気がする。あまり相手をしてやれないのが原因だとすれば、責め立てることもできない。

「先に風呂入りたかったな…」

「今更止められないっての。風呂なら後で一緒に入りましょうね?」

少尉に抱き上げられ、ベッドの上に四つん這いの格好で乗せられる。
少尉の視線の先にあるところを考えれば、恥ずかしさで顔が紅潮する。今まで何度も見られていても、恥ずかしいものは恥ずかしい。

「久々だからあんま手加減してやれねえかも…」

そう言いながら、オレの中へと指が侵入してくる。少し荒っぽいが、傷付けないように気遣いながらそこを解かしていく。
暫くしてから指を抜かれれば、喪失感からなのか、はたまた次への期待からなのか、オレの意思とは関係なくそこがひくついた。

「入れるぞ?」

指よりも遥かに質量の大きくて熱いそれが、オレの中を出たり入ったりして内壁を擦る。
その度にオレの口からは、自分のものじゃないような甘ったるい声が漏れ、少尉の自身を締め付けた。

「あっ‥んッ…イき、たい…んんっ」

ゴムが取られるまで、イきたくともイけない。
少尉に訴えれば「一緒にイこう」と言われ、更に動きを激しくし、ガンガンとオレを攻め立てられ、頭の中が真っ白になる程に快楽に酔わされる。
こうなったらオレはただ喘いでいるしかない。

「あっ、ん…ぁあ…んッ」

「出すぞ…ッ」

中に熱いものが出されたのを感じたと同時にゴムが取られ、待っていましたと言わんばかりに、布団に精液を飛ばした。









「腰痛いんだけど…」

「先に言っただろ?手加減できねえかもってさ」

枕に顔を埋めながら訴えれば、少尉は自分は何も悪くはありませんと言った顔をしながら、オレの隣で煙草を吹かし始める。
あれから何回もヤられ、正直何回イかされたかなんて覚えていない。元気にも程がある。

「寝煙草禁止!」

少尉の手から煙草を奪い取り、近くにあった灰皿に押し付けて火を消す。
少尉の煙草の匂いは嫌いじゃなかいが、このペースで吸い続けたら、数年後には肺が真っ黒になってそうだ。

「口が寂しいんスよ…煙草が駄目ならキスしても?」

「しょうがねえな…」

その日の最後のキスは煙草の味がした。





Fin




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!