.
扉の向こうから敵が攻めて来てから一カ月が経つ。
あの事件以来中央司令部へと復帰を果たし、今では活躍を認められ准将の地位まで上り詰めてた。

「准将、午後から軍事会議で使う資料をお持ちしました」

ノックの後資料を持って執務室へと入って来たのは、以前と同じように私の部下として仕えているホークアイ中尉。

「あぁ、そこに置いておいてくれ…」

書類にペンを走らせながら机の空いている位置を指差す。
現在司令部では忙しい日々が続いている。普段ならサボりたいところだが、ペンを離す暇も無い程の多忙な日々。

「もうすぐ一カ月ですね…」

中尉から呟くように言われた言葉に、ピタッと手の動きを止めた。
もうすぐ一カ月…何がと言わなくてもすぐに分かる。敵が攻め国を混乱させた時…エドワードが戻り、そしてこちらの世界を守る為に再び遠い世界に行ってしまった日……

「もうそんなに経つかね…」

「えぇ…」

背もたれに寄りかかりキィっと椅子を鳴す。
窓の外では着々と建物の修復作業が進められている。私が遠くを見つめている間に、中尉は敬礼し静かに部屋を後にした。
パタンという音と同時に引き出しへと視線を向け、中から一通の封筒を取り出す。宛先は無い…いや、書くことの出来ない封筒。

「君は今何処にいるんだい…?」

中に入っている便せんをカサリと取り出す。



扉の向こうにいる君へ

調子はどうだい?こちらではあれから毎日仕事に追われている。あの後私は准将の地位に就き昔の時のように働かされているよ。
弟君は元気かね?あの時は止められ無くてすまなかったね。しかし君達は二人一緒にいるのがいいと思ったのでね。私の判断が間違っていないことを願うよ。
君にとって私はどういう存在だったのだろうか…
私にとって君は安らぎであり、光だった。眩しくて見えないくらいに…
君がいなくなった二年間は正に私は闇の中にいた。
しかし君のおかげでまた光を取り戻せた。
ありがとう…
私はもう迷わない。君のように真っ直ぐ前に進むよ。
ではまたいつか君に会えると信じているよ。

ロイ・マスタング



一通り自分の筆跡に目を通すと、再び封筒の中へと戻し引き出しへと入れる。
空は雲一つ無く、太陽の光が街を満たしている。
眩しいそれを目を細めて見てから、再びペンを手に取った。

待っているよエドワード…
いつかその扉を開けてくれるその時を……





Fin


あきゅろす。
無料HPエムペ!