「大将と大佐ってもうヤったりしてんのか?」

前から聞きたいと思っていたことではあった。
今日は珍しくみんな出ていて、何故か大佐の所じゃなくて、大将がここに居て二人きりな訳で。好奇心が抑えきれなかった。

「俺の前でアイツの話をするな」

あれ?もしかして喧嘩してるとかか?
イライラとしながら、大将は持っていた分厚い文献を閉じる。いつもよくあんな本読めるよなと感心する。俺なんかが読んでもきっと最初の一行で挫折…いや、その本を持ってタイトルを見ただけで読むことを止めるだろう。

「喧嘩してんなら早く仲直りしろよ?」

「喧嘩じゃねえし」

急に俺の座っている椅子をクルリと回し向かい合わせにさせられる。おかげでサインが変なことになっちまった。やり直し確定だ。

「少尉、俺のことどう思う?」

「どうって…」

「可愛いとかかっこいいとかさ」

金色の大きい瞳に白い肌、俺よりも濃い金髪に小柄な体(って言えば本人は怒るだろうが)。
目つきは少し悪いが、まだ成長途中の中性的な顔は可愛いと思う。あと数年もすれば大佐に負けないくらいの美青年になりそうだ。

「可愛いとは思うけど」

弟のように思ってるし、普通に可愛いと思う。
これは俺だけじゃなくて、俺達マスタング組の奴ら全員が思っていることだ。

「ならキスしていい?」

「へ?」

最初何を言ってるのか理解ができなかった。考えている内に近付いてくる大将の顔。
このままじゃヤバいと思ってるのに、体が動かない。パニックで睫毛長いなぁとか関係ないことを思う。
お互いの息がかかる距離で、ピタリと大将の動きが止まる。

「いい加減にしたまえ。ハボックが困っているぞ」

止まった理由は大佐が大将の頭を抑えたから。
ムスッとした顔をして大将の顔が離れていき、ホッとため息を吐く。

「大佐だって他の人としてんだから別にいいじゃん、ほっとけよ」

「あれはしたんじゃなくてされたんだ」

「嫌なら避ければいいだろ!?」

「令嬢を無理に振り払うことはできないだろ!」

俺を挟んで続けられる口論。
会話の内容から推測すれば、大佐が令嬢にキスされて、大将はそれを目撃。それの仕返しに同じことをしようとして巻き込まれたのが俺。とんだ貧乏くじだ。
とりあえず喧嘩するなら余所でやってほしい。

「オレは少尉と付き合うことにしたんだから大佐が何してようがもう関係ないね」

へぇ、俺って大将と付き合うことになったんだ。初耳だ。

「何を言ってるんだ、そんなことは許さん!」

「大佐の許しなんかいらねえよ!」

「いいからちょっと来なさい!」

大佐に腕を掴まれ、騒ぎながら執務室へと消えていく二人。おそらく数時間は出てこないだろう。
バカップルには関わるべきじゃない。
前からわかっていたことだが、今日改めて思い知らされた。



Fin




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