それはオレが東方司令部に定期報告に訪れた時に起こった。
アルを図書館に置いて一人で大佐の執務室へと慣れ親しんだ廊下を歩いている途中、いつもは使われていない部屋に数人の軍人が群がっているのが見えた。
何やってんだ?
薄暗い部屋の中何かを囲むように座り込んでいる集団はどうみても怪しい。その軍人の群れの中にはハボック少尉やブレダ少尉がいる。
慣れ親しんだ顔がいる事で戸惑いもなくオレは部屋に足を踏み入れた。
「何やってんだ?」
その声にその場にいた全員が明らかに驚いたように肩をビクッと揺らし振り返る。
この驚き様。益々怪しい…
「なんだ大将か…」
声の主がオレだと分かると皆一斉に安堵のため息を吐く。
本当に何だってんだ。
「あっ、せっかくだし大将も一緒に見てけよ!」
「だから何を?」
意味が分からんと疑問符を投げかければ、正しい返答も無くとグイッと引っ張っられ怪しい集団に入れられる。
仕方なく前を見れば、目の前にはテレビ。どうやら集まってビデオを見ていたようだ。
サボリがバレるのをビクビクしてたのか?
今の状況とさっきの様子から推測を立てていれば、ハボック少尉がビデオを再生させた。
「…なっ!?何なんだ、むぐぅ………」
言葉が最後まで出なかったのは口を抑えられたからだ。
「騒ぐなって!バレたらヤバいだろ!!」
こんなのいきなり見せられて騒ぐなって方に無理がある!
画面に映し出されていたのは二枚目の男性と綺麗な女性の情事中の姿、いわゆるエロビデオ。
勿論こんなもの見るのは初めて。
興味が無いわけじゃ無いが、こんなものを見てる時間があるなら文献を読んでる方が有意義ってもんだ。
「お子様にはまだ早かったかな?」
にやにやとしながら顔を覗き込んでくる尉の手を振り払う。
「ガキ扱いするな!このエロ軍人!!」
全くもって不愉快だ。
イライラとしながら開け閉めされたドアは、けたたましい音を起てて廊下に響いた。
「どうかしたのかね?鋼の…顔が赤いぞ?」
あの後、本来の目的である報告書を出すために大佐のいる執務室へと足を走らせた。
「何でもねぇよ…ただ走ってきたから暑いだけ!」
実際に走った距離は数十メートルなのだから暑くなるわけはないが、大佐にヘタなことを言うとからかわれるのは目に見えている。
適当に言い訳をするとボスンとソファーに座る。
大佐も大して気にしなかったのだろう。深く追求しようともせず、報告書へと視線を落とした。
暇だな……読むものも無く、ただ座っているという行為は実に退屈だ。
まだかまだかと大佐に視線を送る。
……へぇ〜、大佐って綺麗な手してんだな……そういえばさっきの男の人大佐にちょっと似てるかも…大佐もあんな風に女の人を抱くのかな……
って何考えてんだオレは!?
頭に浮かんだ考えと胸に湧いたわだかまりを一掃すべく頭を左右に振る。
この行為でそれが消える訳でもないのは分かっているが、どうしてもやってしまう。
「鋼の、ここだが…」
大佐が報告書を指差しながらこちらを向いている。
今の様子は見られていなかったようで一先ず安心し立ち上がる。
「何か問題でもあ…ッ!」
ピリッとした痛みが指に走り、指からは少量の血が出てきている。紙の端で切れたのだろう。
大した痛みではないが、地味に痛い。
「全くそそっかしいね…こっちに来なさい手当てをするから」
「いいよ、こんなかすり傷なんかほっときゃ治るし…」
ペロッと血を舐めてはみたが、また血が出てくる。
「書類に血が付いたら困るだろ?」
「うっ………」
尤もな言い分に返す言葉も無く、仕方なく大人しく従い大佐の方へと回る。
引き出しから簡単な治療道具を取り出し、指から出ている血を拭い簡単に手当てをしていく様をただじっと見ていた。
「あんがと…」
治療も終わり手を戻そうとしたが、それは叶わなかった。手を引こうとした瞬間大佐に手首を掴まれたのである。
「な、何だよ!?」
「さっきから君は何を考えているんだい?私を見ては百面相していたが…」
見られてた!?
「何も!あんたには関係ないだろ!?」
大佐を見ながら関係ないって事はないだろう自分でも思う。
だが大佐の情事の姿を想像してました〜なんて言える訳がない。
恥ずかしさと後ろめたさが相成って、ぷいっと顔を横に背ける。
「素直じゃないねぇ〜…私の格好良さに見惚れていたならそう言えばいいものを…」
「だ、誰が!!ただ大佐が…」
しまった!空いている方の手で口を抑えたが、時既に遅し。大佐は既にしたり顔で私が何だねと問い詰めてくる。こうなっては逃げる手段は残されていない。
「……さっき少尉達に見せられた‥エロビデオの男の人が大佐に似てたから…」
「私に似てたから?」
続きを言えとの催促。
全部言わないと離してやらないという脅しにも聞こえてくる。
「…大佐もああいう風に女の人を抱くのかな‥って思っただけ!!言ったからいいだろ!?いい加減離せ!!」
恥ずかしすぎる…!今すぐこの場から走り出したい。
大佐を睨みつけるように見て腕をぶんぶんと振ったが、手は離されることは無かった。
「君は…私に抱かれたいのかい?」
「はぁ?」
言っている意味が分からず気の抜けた声を出してしまった。
「何でそうなる訳?それにオレ…男だし」
「私がどういう風に抱くのか気になるのだろ?それなら体感するのが一番早い。それに性別は関係ないだろ…」
頭の中はパニック状態。
あの行為は異性間でやるものであり、決して同性間でやるものではない筈だ。それなのに目の前にいる男は性別は関係ないと言ってくる。
それに体感しろ?バカ言うなってんだ!
「それとも怖いのかい?私に抱かれるのが…」
バカにされるようにクスリと言われた言葉にカチンときて怒鳴る。
「別に怖くなんかねぇよ!なら抱いてもらおうじゃねえか!!」
「二言は無いな?」
「無い!!」
売り言葉に買い言葉と言った具合によく考えもせず大佐に言葉を浴びせていく。オレの悪い癖だ。
「では付いて来たまえ」
売られた喧嘩は買ってやる。
頭に血を上らせたまま、すくっと椅子から立ち上がり歩き出した大佐の後を追いかけた。
案内された場所は執務室の奥にある大佐専用の仮眠室。部屋の中はベッドとクローゼットがある位の質素な部屋だ。
大佐は部屋に入って鍵を閉めるなり、早速始めようかと言ってオレをベッドに押し倒した。
「…本当にやるの?」
ここにきて漸く頭に冷静さが戻ってくる。
とんでもない事を言ったんじゃないかオレは?
今更ながらに後悔する。
「二言は無いと言ったろ?」
止めてくれる気は無さそうだ…
「でもさ、やっぱ…ひゃっ」
聞き耳を持たないというように手が胸へと滑り込んでくる。
「や‥だ…」
手で押し返そうとするが、いとも簡単に手を絡め取られ頭上で抑えられてしまった。
「や、め‥ろ…」
体を捩り抵抗を続けるが全く意味はない。
服が上にたくし上げられる。
胸の飾りに片方は手で、もう片方は舌で追い詰められる。
「あっ‥ちょっ…やだ…」
「何が嫌なんだね?こんなに感じているくせに…」
クスリと笑う大佐の声と同時に、オレ自身に手が触れられる。そこは既にズボンの上から分かる程に存在を主張していた。
「ひぁ!?」
突然触られたことで体がビクッと反応する。
「きつそうだな…」
ぼそりと独り言のように言うなり、手際よくベルトを外しズボンと下着をずり下ろされた。
手慣れてやがる…
急に外気に晒されぶるっと身震いし、普段他人に見られるところでは無い場所を大佐に見られている羞恥心で顔が熱くなるのが嫌でも分かる。
しかし大佐はそんなオレの様子を気にする事なく、オレ自身を口の中へと何の戸惑いも無く入れた。
「なっ!?な‥んっ…に‥して、ん‥だよ…」
既に解放されていた手で大佐の頭を押すが、上手く力が入らず全く意味がない。
「んっ…はぁ…‥あっ……」
ダメだ…耐えられない…!
体がビクビクと痙攣し大佐の口の中へと欲を吐き出した。
射精感のせいか、今自分に起こっている事に頭が追いつかない。
「まだ今からが本番だよ?」
わざと聞こえるようにゴクンと自分の出したものを飲みほされ、頬を優しく撫でられる。
「まだ、やる‥のか?」
もう十分ではないのか?
僅か戻った思考で問う。
「君だけが気持ち良いだけでは終わらないよ」
「ひぁっ!!」
にやりとした笑みを浮かべながら大佐の手は自身へと伸ばされた。イったばかりだというのに、再びそれは反り返りとろとろと液を流し出す。
どうなってんだ、オレの体は…
自身から手が離されたと思えば、秘部へと指が入れられる。
「やっ、ん‥なとこ、ろ…きた‥ない」
そんなところに指突っ込んで何が楽しいんだ…!
嫌がるオレを気にすることなく指が進められていく。
「んぁ…ふっ…‥あッ……」
この声は本当にオレの声なんだろうか?
あんなところに指を入れられて感じるなんて…自分で自分が信じられない。
「厭らしい体だ…私の指を絡めとって離さないよ」
楽しそうな笑い声。
中で既に三本に増やされていた指を曲げられ、勝手に体がビクンと跳ねる。
「そろそろいいかな…」
「えっ……」
イく前に指を抜かれ思わず物欲しそうな声を出してしまい、赤くなった顔を手で覆った。
クスッと笑い声とチャックを下ろす音が聞こえたと思ったら、指が入っていた場所に熱いものが当てられる。
ここまでくれば何をしようとしてるかなんて一目瞭然だ。
「ちょっ、無理だって!!そんなの入る訳…」
「最初は痛いかもしれんが直に慣れる」
絶対無理だと首を振ったが、大佐は大丈夫だと何の根拠もなしに腰を進めた。
「ッ…いた、イ…」
「慣らしてもこの狭さか…」
無意識にオレの中は大佐を離さないかのようにぎゅうぎゅうと締め付けた。
痛さで涙が目に溜まる。
新手の拷問か何かじゃないかとも思った。
そんなオレの心境を知ってか知らずか、大佐がゆっくりと腰を動かし始めた。
「んぁ………」
大佐のものが一点に触れた時、痺れるような感覚が体を這った。
「ここか…」
そんなオレの反応を見て、そこばかりを集中して突かれる。
「あっ…はぁ……んぁ」
こうなっては理性なんか残されていない。快楽を求めて腰を動かす程だ。
ベッドは二人の動きに合わせてギシギシと鳴り、結合部分からはぐちゅぐちゅと水音が部屋へと響く。
「ぁん…あっ‥はぁ…ッ」
「…そろそろイくぞ」
ギリギリまで引き抜かれたと思ったら一気に最奥を貫かれる。
「あぁああぁ――――…」
「くっ…」
熱いものが中へと流れ込んでくるのを感じ、自分の熱も腹へと飛ばした。
体力を使い切ったのか、瞼がやたらと重い。睡魔に気を許せば今にも寝てしまうそうだった。
「眠いなら寝ていて構わないよ」
「ん……」
頭を優しく撫でられる。普段なら子供扱いされればムカついたが、この時は逆に嬉しさが込み上げてきた。
この時唐突に分かった。
あぁオレは………
「大佐が好きだ……」
それだけ言うと眠りの中へと身を置いた。
スースーと気持ち良さそうに寝ているオレの横で、きっと大佐は目を丸くしていただろう。
「起きたら私の気持ちを聞いてもらうよ…」
穏やかな顔で言われたその言葉は、既に夢の世界に入っているオレの耳には入ってこなかった。
始まりはいつも唐突で嵐のようにやってくる。
きっかけは小さなことで、その鍵を手にした時扉は開かれるのだ。
その先には何があるかは誰にも知る事は出来ない。
しかしそれは必然で、運命の歯車は止まることなく進む。
幸せへの鍵…
それは手が届くところにあるのかもしれない………
Fin
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