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殺戮人形




母親は、リビングでいつも通り酒に溺れていた。

会社が潰れた父が私たちを捨てて逃げて行ってから、いつもこうだ。
吐いても吐いても飲み続け、満足したら私に暴力を振るう。
その繰り返しだ。




「…ただいま」

いつも通りに声をかける。
ソファーに座ってこちらに背を向けている母は、こちらを振り向きもしない。

私はその足でキッチンへと向かった。





そして、目当てのものを見つけるとそれを手に取った。

ー何故だろう、体が軽い。
家に着いてからやけに体が楽になった。



もう、限界なのかな。









私はリビングへ向かった。














「…ねえ、お母さん」


「………何よ。帰ってたなら早く夕飯作ってお風呂沸かしなさいよ」

私から声をかけたのは久しぶりだ。
少し驚いたのだろう、母親ー…いや、女の肩が僅かに揺れた。
それでも振り返らない女に、私はばれないように安堵する。




「その前にさ、聞きたいこと、あるんだけど」

「……」

女は答えずに、次の酒へと手を伸ばす。
それでも構わずに、私は一方的に話しかけた。


「いろいろあったね。今まで。幸せだったね。今まで。お父さんがいて、お母さんがいて、私すごく幸せだった」

「…」

女は答えない。



「−だからさ、幸せついでに最後に確認したいことがあるんだ」

私は一歩一歩、近づいていく。

そしてー…










「お母さん、私のこと、好き?」










「…嫌いよ。大嫌い。あんたなんてさっさと死ねばいいのにー…!」

女は、答えた。

私は、嗤う、嗤う、嗤う。









「ありがとう。ーそれが聞きたかった」






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あきゅろす。
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