殺戮人形
1
ーあれからリボーンはオレたちに何も教えてくれなかった。
いや、教えなかったんじゃない。
『教えられなかったんだ』
信じたくはないけど、ザンザスとかと戦って自分には超直感というものがあるのはわかった。
ーだからわかる。
リボーンさえ何もしらないんだ。
紺野憂という存在を。
零崎とかいう、脅威を。
「裏世界…」
「どうしましたか十代目?」
ああ、そういえば今は学校だった。
突然言葉を発したオレに、獄寺君が心配そうに話しかけてきた。
「いや、なんでもないよ」
「裏世界って昨日坊主が言ってたやつか?」
どうやらオレの呟きは丸聞こえだったらしい。
次に話に入ってきたのは山本だった。
「まあね…一体何なんだろう」
「坊主もそれしか言ってなかったしなー」
「オレたちマフィアのいる世界のことっすよね?」
ー多分、そうなんだろう。
でも、だとしたらなんであの話の後に、そんな単語が出てきたのか。
『裏世界』に『零崎』
もし関係があるとしたらー…
零崎というのは、マフィアかそれ関係の存在なんだろうか?
だとしたら、何で紺野さんが?
情報が少なすぎる。
昨日も雲雀さんに呼び出されたみたいなのに、平気で帰ってきたしー…
何者なんだよ…!
「ツナぁ…」
突然頭上から聞こえてきた声に顔を上げれば、そこには真代ちゃんの姿があった。
頬は痛々しく腫れていて、ガーゼを被せてあるけどその殴られた力の強さは痛いくらいに伝わった。
「ごめんね…私のせいでまた大変なことになっちゃって」
涙ながらにそう言う真代ちゃんに、オレは心が痛くなった。
「そんなことないよ!」
「真代は悪くないのな!」
「悪いのは全部紺野だろうが」
そう言うと、真代ちゃんは涙を流しながら「ありがとう」と呟いた。
「…」
ーああ、オレはまた守れなかったんだ。
前だってオレたちは真代ちゃんがいじめられているのを、一度だって助けることができなかった。
ーまたオレは、仲間を守れないのか。
ぐ、と拳を強く握り締めたその瞬間だった。
『進路についての講話を行いますので、2‐A生徒は全員体育館へ』
スピーカーから響く、教師の声。
今日はそんな予定は無かったはずだ。
何故オレたちだけ?
ざわざわと、教室内が騒ぎ出す。
「ツナ…何かあったのかなぁ?怖いよぉ」
「…大丈夫、オレたちが守るから」
オレは怖がる真代ちゃんの手を握った。
この時オレが感じた嫌な予感は、的中することになる。
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