殺戮人形
1
その日、綱吉たちは沢田宅へと集まっていた。
呼び出したのはもちろん、リボーンだった。
「汀目愛織についてだ」
そう言えば、三人は一斉にリボーンに向けて身を乗り出した。
「あいつのこと知ってるんですか!?」
だが、その期待に反してリボーンは「いいや」と首を振った。
「あいつが消えてからはさっぱりだ。どんなに調べても履歴が一切出てこねえ。…こりゃ何かあるぞ」
深刻そうに言うリボーンに、綱吉たちは顔を見合わせると、今日あったことを話し出した。
ー今現在、ザンザスたちヴァリアーを倒した自分たちでも、とても敵う気がしなかったと。
「…そうか」
リボーンは話を聞いてしばらく黙り込むと、ゆっくりと頷いた。
「オレも調査を続けてみる。ボンゴレの方にも要請したから数日後には返事が来るはずだぞ」
「じゃあ今日はここまでだな。じゃあな、ツナ」
そう言って他二人は立ち上がったが、その瞬間綱吉が「あ…」と声を上げた。
「どうかしましたか十代目?」
「そういえば…紺野さん、変なこと言ってたなって」
「変なこと?」
その言葉に、二人はもう一度腰をその場に下ろした。
「よく覚えてないけど…ぜろ、なんとかって」
はっきり思い出せないようで、首を捻る綱吉の横で山本がぽん、と叩いた。
「ああ、それオレも聞いてたぜ!確かざろさきがどうとかー…」
山本は、そこから先の言葉を発することが出来なかった。
普段何があっても表情をあまり変化させないリボーンが、手に持っていたコーヒーカップを、がしゃんと落としたのだ。
「リ、リボーン?」
驚きで固まる三人に、リボーンは放心したかのように俯いたまま動かない。
「どうしたんだよ?」
あわてて零したコーヒーを片付ける綱吉に、リボーンは漸く口を開いた。
「…今、零崎って言ったか?」
「あ、ああ…」
「オレもあの時、確かにそう聞こえました」
全員が頷くと、更にリボーンはしばらく黙り込んで続けた。
「…聞き間違えであることを祈るしかねーな」
「え?」
冷や汗を流し、やや震える声でそう呟くリボーンに、三人は不思議そうな表情を浮かべている。
無理もない。
こんな表情のリボーンは、今まで初めて見たのだ。
「零崎って、何かあるのか?」
「…オレも、はっきり言って全然知らねーんだ。ただ、九代目からちらっと聞いたことがある」
リボーンは首を振った。
そして、再度口を開く。
「『零崎には手を出すな』…それだけだ」
それ以上、リボーンは何も語らなかった。
[次へ#]
無料HPエムペ!