[携帯モード] [URL送信]

殺戮人形




ーこの制服を着るのは久しぶりだ。



あれから数日経ち、私は真新しい制服へと袖を通していた。
以前使っていた制服はぼろぼろだったし、まず血塗れで使えなかった。





そう、今日こそが私の入学式。
復讐が始まる日だ。



「−うしっ」

挟むように両頬を叩いて気合を入れると、私は双識兄さんが買ってくれたマンションの一室を後にした。









特に何の問題もなく、私は並盛中学校についた。
この髪のせいでかなり視線は痛かったが、まあ仕方ない。

「失礼します」

私は二回ほど軽くノックをすると、職員室の扉を開いた。



ざわり、と職員室が騒然とする。



髪じゃない、私の顔を見て、無能な大人たちは目を丸くしている。

ー当然だ。
いじめられていて、しかも母親は自宅で殺されていて、当の私は行方不明。

どうせ風紀委員なんかが自殺として処理したんだろう。




「−どうしたんですか、『先生』?」

私は薄く笑いを浮かべながら、ゆっくりと担任へと近づいて行く。

「…紺野、どうして…」

「その名で呼ぶな」

ぎろり、とそう呼んだ教師を睨めば、職員室中がひんやりとした冷たい空気で包まれたのがわかった。
揃って冷や汗を流す教師たちは、がくがくと小刻みに震えていた。




「どうしたんですか?私は愛織ですよ。汀目愛織。転校生です」

にっこりと笑って、まずは自己紹介。
汀目の名字は人識兄さんからもらった。
以前、私のように中学校に通っていたと時に使っていたらしい。

「早く教室に案内してください」

担任の前でぴたりと止まり、そう言えばあわてて「こっちだ」と呟いて職員室を出て行った。



私はそれを一定の距離を置きながら着いていく。
どうやら履歴をいろいろいじったのは正解だったようだ。

帰国子女、しかもとびっきりのお嬢様。

こんな髪のお嬢様なんているわけがないが、そこは仕方ないだろう。
おかげでこうして教師たちは私には逆らえない。





「…ここだ」

2−A。
ああ、懐かしい。
懐かしすぎて吐き気がするよ。

このざわめく声も、…ひっそりと香る香水の香りも。




「入ってきなさい」

先に入っていた担任から震える声で声をかけられ、私はにやりと微笑んだ。



ー嗚呼、うずうずするね。



そして教室に足を踏み入れた瞬間ー…









教室中が、戦慄した。







[次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!