殺戮人形
1
ーこの制服を着るのは久しぶりだ。
あれから数日経ち、私は真新しい制服へと袖を通していた。
以前使っていた制服はぼろぼろだったし、まず血塗れで使えなかった。
そう、今日こそが私の入学式。
復讐が始まる日だ。
「−うしっ」
挟むように両頬を叩いて気合を入れると、私は双識兄さんが買ってくれたマンションの一室を後にした。
特に何の問題もなく、私は並盛中学校についた。
この髪のせいでかなり視線は痛かったが、まあ仕方ない。
「失礼します」
私は二回ほど軽くノックをすると、職員室の扉を開いた。
ざわり、と職員室が騒然とする。
髪じゃない、私の顔を見て、無能な大人たちは目を丸くしている。
ー当然だ。
いじめられていて、しかも母親は自宅で殺されていて、当の私は行方不明。
どうせ風紀委員なんかが自殺として処理したんだろう。
「−どうしたんですか、『先生』?」
私は薄く笑いを浮かべながら、ゆっくりと担任へと近づいて行く。
「…紺野、どうして…」
「その名で呼ぶな」
ぎろり、とそう呼んだ教師を睨めば、職員室中がひんやりとした冷たい空気で包まれたのがわかった。
揃って冷や汗を流す教師たちは、がくがくと小刻みに震えていた。
「どうしたんですか?私は愛織ですよ。汀目愛織。転校生です」
にっこりと笑って、まずは自己紹介。
汀目の名字は人識兄さんからもらった。
以前、私のように中学校に通っていたと時に使っていたらしい。
「早く教室に案内してください」
担任の前でぴたりと止まり、そう言えばあわてて「こっちだ」と呟いて職員室を出て行った。
私はそれを一定の距離を置きながら着いていく。
どうやら履歴をいろいろいじったのは正解だったようだ。
帰国子女、しかもとびっきりのお嬢様。
こんな髪のお嬢様なんているわけがないが、そこは仕方ないだろう。
おかげでこうして教師たちは私には逆らえない。
「…ここだ」
2−A。
ああ、懐かしい。
懐かしすぎて吐き気がするよ。
このざわめく声も、…ひっそりと香る香水の香りも。
「入ってきなさい」
先に入っていた担任から震える声で声をかけられ、私はにやりと微笑んだ。
ー嗚呼、うずうずするね。
そして教室に足を踏み入れた瞬間ー…
教室中が、戦慄した。
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