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Hello, fine days
Hello,fine days<1>
スタジオを後にした僕はかかりつけの眼科医の元を訪れた。親しみを込め、受付の女性を呼ぶ。春子さん、と。春子さんは僕の姿に目を細めて、いらっしゃいと病院らしからぬ挨拶で迎えてくれた。


「コンタクトの処方箋かしら?」

「うん。切らしたら大変だから早めにと思って」


僕は薄い灰色のサングラスを外して応接室のソファに腰を降ろす。


「私は好きだけどねえ、浩ちゃんの瞳」

「ありがとう、春子さん」


春子さんは僕の瞳を慈しむように見つめてそう褒めてくれた。暗にコンタクトを外せと言っているのは分かっていたから言葉通りに受け止めて礼を返す。

さして視力は悪くない。この医院で処方箋を貰うのは瞳の色を黒に見せるコンタクトレンズを使用する為だ。

僕は瞳の色が父とも母とも違う。日本人の濃い褐色ではなく、色素が薄く緑に近い色をしている。それが何処の誰なのかは分からないけれど、確かに僕には外国の血が入っているらしい。

受付で僕のカルテを探す春子さんは見慣れない眼鏡を掛けている。かれこれ10年の付き合いになるこの女性もそんな年齢になったのか。僕は自分の手のひらを見つめ、時の流れを知る。


もうとっくに埋もれた過去だ。春子さんの言うようにコンタクトなんて外してもいいのだろう。それでも僕にはそうする勇気は無い。

ああ、そっか。だからか。
唐突に自覚した。


思わず漏れた自嘲の笑い声に春子さんが首を傾げた。


だから、彼女は出ていったのだ。何一つ語ろうとはしない僕を訝しんで。

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あきゅろす。
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