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novel
枯草の雨を待て3†
 慣らすというよりは拡張すると言った方が正しい。乱暴に抜き差しされる指で敏感な直腸を縦横無尽に掻き回される。途中指先がある一点を掠めてスクアーロが思わず鼻にかかった喘ぎを洩らすと、今度はそこばかり狙うように容赦なく突き上げられた。
「う、が…あ、あ゛……」
 びくんびくんと腰を跳ね上げ、霞んだ視界で男の顔を探す。
「あっ、あっ、も…ザンザ…」
 息も絶え絶えに名を呼ぶと、気配だけで男がニヤリと笑ったのが分かった。
「小汚ぇツラで喘いでんじゃねえよ。欲しけりゃてめえでねだってオレをその気にさせてみろ」
「な゛っ!こ、の鬼畜…っ」
 クソボスと罵った声が聞こえたかどうか。ぐちゃぐちゃと自分の下肢から聞こえてくる粘着音に耳を塞ぎたい衝動に駆られながら、もっと強く確かな刺激が欲しくてスクアーロはギロリとザンザスを睨んだ。
 もう恥も外聞も知ったこっちゃない。沸き上がる本能に任せて薄汚い欲情に塗れた言葉を吐く。
「よ、こせっ!…てめえのデカブツを中に突っ込んで、オレがてめえを扱き立ててやる!」
「くっ!ぶはーっははは!」
 スクアーロの下卑た物言いに満足したのか、ザンザスが声を上げて笑う。
「上等だ。ドカス」
 カチャカチャと金具を外す音が聞こえて、スクアーロは思わずごくりと唾を飲み下した。恐れではなく更なる快感への期待で背中の産毛がぞくりと粟立つ。
 だが、されるがままというのは気に食わない。
 口端を上げてニヤッと笑ってみせ、自らザンザスの腰に脚を絡めて赤く腫れたそこを見せ付けるようにゆらりと腰を揺らし、誘ってやった。
「来いよ、ボス」
「クソ生意気なその態度、後悔させてやる」
 熱く滾った昂ぶりを押し付けられ、慎ましやかに閉じかけていた襞の抵抗を嘲笑うかのようにぐっと一気に奥まで押し込まれる。
「ぐ、あ゛ぁっ!」
 馴染む暇さえ与えられず、容赦ない抜き差しが始まった。ずるりと引き抜かれる度、中の襞がねっとりと男の肉を絡め取り、また突き入れられると、捲れ上がった孔の入り口がぎゅぅっと締まって雁首を締め上げる。
 スクアーロの意識と関係なく勝手に蠢く襞の抵抗を楽しむように、ザンザスがバラバラなリズムで律動を叩き込んでくる。
「はっ、あっ、あっ…ひ、い゛っ!」
 中の弱点をわざと抉るように突き上げられて、後孔から背筋を駆け上がるような快感にスクアーロは頭を仰け反らせた。
「はぁ、あ…、く、は…」
 がくがくと揺れる視線の先に、大きく切り取られたガラス窓が見える。
 降り続く雨は一向に止む気配を見せず、次から次へと透明な筋を作って流れ落ちていった。
 もしかしたら、明け方にはみぞれに変わっているかもしれない。
 焼けるような熱さを体内に取り込みながら、ぼんやりとそう思った。


 ふと肌寒さを感じて、スクアーロは目を覚ました。
「んあ゛…もう朝か?」
 いつの間に脱がされたのか、下どころか上半身まで素っ裸で、手首の拘束も解けていた。
 外の様子を確かめる前にまずは冷え切った肩を温めようと、腰の辺りでぐしゃぐしゃになっていたシーツに手を伸ばす。そのまま一気に引き上げようとして、スクアーロははたと気付いた。
 肩は冷え切っているのに、何故か背中が温かい。
「う゛ぉ…」
 まさかと思い首だけで振り向くと、見慣れた男の顔がやけに間近にあって正直本気でびびった。
「ざ、ザンザス…」
 思わずその名を呟くと、眠りの浅い男がゆっくりと瞼を開く。
「何してやがる、カス」
「な、何っておまえ…」
 それはこちらのセリフだという言葉を飲み込んで、寝起きで少し気だるげな男の顔をまじまじと見つめる。いつも行為の後は捨て置かれるように放置されるのが常だったから、こんな風に無防備なザンザスを見られるのは珍しい。
「うるせぇ」
 視線さえ鬱陶しいと言いたげに眉をひそめて、ザンザスがのっそりと身体を起こした。
 せっかく温まっていた背中をひんやりした冷気が撫でて、スクアーロが不満げな声を洩らす。
「う゛お゛ぉい!さみーじゃねぇか!」
 ザンザスがいなくなった場所に背中を押し付けて、温もりを探す。じわりと肌に染み込むような温かさが、なんだか妙に心地良かった。
「なぁ、ザンザス」
「……」
「今度雨が降ったら、またここに来てもいいかぁ?」
「あ゛?ふざけんな、誰がてめーなんざ部屋に入れるか」
 取り付く島もないザンザスの反応に、ちょっと考えてから言う。
「だってよぉ、こーいうのって今だけなんだぜ」
「ああ?また何わけのわかんねえこと言ってやがる」
 ついに頭までいかれたか、と吐き捨てるザンザスに、スクアーロはバサリとシーツを被ってニィッと笑ってみせた。
「もったいねぇだろ」


 だって、知ってしまったから。
 雨の日の人肌は、意外に心地良いということを。
 もし雪が降り始めたらこの部屋には暖炉が焚かれてしまうから、きっとこんな僅かな温かさには気づかなくなってしまう。
 世界が白で覆われる前の、濡れて艶めいた雨の時間だけ。
 この温もりは、きっと今だけの至福。


Fine.

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