novel
東雲色の夜明けを追え2†
「施しだ」
スクアーロの考えを読んだのか、ザンザスが滴るような色気に満ちた顔で嗤うように口端を歪めた。
ほんの一瞬でも欲しいと思ってしまった自分を振り払うように、スクアーロはわざと声を張り上げる。
「おまえ、わかってんだろ!?見られてんだぞぉ、オレたち!」
「男のモノ咥えておっ勃ててやがったてめーが今更なに言ってやがる」
「おっ…!」
そんなことねぇ!と反論したいのに出来ないのが悔しい。今ズボンを下ろしたら、ザンザスを咥えて感じてしまったどころか、だらしなく蜜さえ滲ませている自身があらわになってしまう。
「……ザンザス…っ」
なけなしの慈悲を期待して男の名を呼んでみるが、促すようにくいっと顎をしゃくられただけだった。
「ちく、しょぉ…」
ぎりりと唇を噛みながら、そろそろと身体の向きを変えて男の腰を跨ぐ。
「脱げ」
「くっ…!」
言われて仕方なくベルトに手を伸ばし、ザンザスに向けて腰を掲げたまま下着ごと一気に引き降ろす。途中で膝に引っ掛かって、もたもたとぎこちなく身体を揺らしながら両脚からズボンを引き抜いた。
いっそ先に脱いでしまってから全てを晒した方が、感じる羞恥心も少なくて済んだかも知れない。
左右に揺れて蜜を飛び散らせる花茎や、徐々にあらわになる双珠や後孔を全部見られていると思うだけで、自身の先端から新たな蜜がとろりと溢れ幹を伝うのが分かった。
「もっとケツ下げろ」
「う゛お゛あぁぁぁぁっ!」
これじゃ届かないと言わんばかりに、ザンザスが口の端に触れたスクアーロの先端にぎりっと犬歯を突き立ててきた。
脳天を貫く激しい痛みに不覚にも涙が零れそうになったが、相手がザンザスでは怒るだけ体力の無駄だ。
それに、今は一刻も早くもっと強い快感が欲しかった。
「クソッ…」
言われた通りそろそろと腰を下ろして、自身を男の唇に触れさせる。
「んあ゛ぁぁぁぁっ!」
躊躇いもなく開いた口腔内に引き込まれて、じゅっと溢れた蜜を啜られると信じられないくらい甘い快感が全身を駆け抜けた。
「あんっ!あ、…んぅっ!」
スクアーロとて男だ。一度や二度といわず女に咥えさせたことくらいあるが、そんなの今の気持ちよさに比べたら快感とすら呼べない代物だった。
喉奥まで引き込まれるように吸い上げられ、根こそぎ搾り取られる。ひくひくと蜜を零す孔は舌先を中へ突っ込むようにぐりぐりと抉られて切り込みが深くなる。
息も吐かせぬくらい乱暴な愛撫だが、腰から下がどろどろに蕩けて、もう何も残らないんじゃないかと思うくらい気持ちよかった。
「ふぁ、あ…ザン、ザス…ぅっ」
思わず鼻に掛かった掠れ声で男の名を呼ぶと、ぐっと腰を突き上げられて唾液にまみれたザンザス自身がぴしりと頬を打った。
喘いでないでお前も咥えろ、という催促なんだろう。
「んむっ、んっ…は…ふっ」
ぺちぺちと逃げるそれを舌先で追いかけて、口腔へと迎え入れる。
さっきより硬さを増しているような気がするのは自分の気のせいだろうか。
「…んっ、ぅ、んっ……」
夢中になって男のモノをしゃぶっていると、苦味のある液体が止め処なく溢れるようになってきた。
ずいぶん前から先走りを垂れ流していた自分はそろそろ限界を超えていて、焦らすような男の舌先に翻弄されているばかりだ。
「も、イ……く…」
ザンザスの許可もなしにイって男の口中に白濁を迸らせたりしたら、確実に自分の命はなくなる。
男の絶頂を促そうとちゅっちゅっと先端に吸い付いていたスクアーロは、慈悲を求めるようそれに一層丁寧な愛撫を施した。
「イ…かせろぉ…」
ねだるように腰を振って、じゅるっと苦い蜜を啜り上げる。
自分の後方でザンザスが嘲笑するように吐息で笑ったのが分かった。
だが、今はそんなことに噛み付く余裕はない。
「ザンザス…っ!」
切なげに名を叫ぶと、スクアーロ自身を口から吐き出したザンザスが先端を咥えて唇の甘噛みを施してきた。
「出せ」
「っ!」
辛うじて残っていた羞恥が溶けるような快感と混じり合って、ぞくりと産毛を逆立たせる。
「けどよぉ…」
「オレの顔にぶちまける気か」
スクアーロのそれを緩く食んでいたザンザスが、脅すようにぐっと歯を立てて力を込める。
ともすれば噛み切られてしまいそうな恐怖に、歪んだ悦びが身を裂いた。
「ん゛ぁっ、あっ…や」
「出せ。施しだと言ったはずだ」
「あっ、も…ぁ、……あああっ!」
もう一度促すようきゅっと先端に吸い付かれて、ギリギリで耐えていた理性がついに崩壊した。
沸き上がる衝動のままガクガクと腰を突き上げ、男の口腔に熱い淫液を注ぎ込む。
「あっ、あぁっ……は、ぅんっ…」
ぶるりと全身を震わせて最後の一滴までを吐き出すと、何かを嚥下するようなごくりという音が聞こえた。
「なっ、おま……飲んだのかぁ!?」
有り得ない状況に焦ったスクアーロが振り向こうとした瞬間、天を向いてそそり立っていたザンザスの先端を鮫に似た鋭い歯先が掠めた。
びくりと震えたそれが、どくっと噴き上げるようにして白濁を撒き散らす。
「う゛お゛っ!」
ちょうど真ん前にあったスクアーロの顔にびしゃりと熱いものが弾け、ぼたぼたと顎を伝って次から次へと流れ落ちて行った。
「オレには顔射かよ!」
「文句あんのか」
予期せぬタイミングでイかされたのが気に入らなかったのだろうか。ザンザスがどこか不満げな顔で言った。
文句があるかなんて問われたら、散々気持ちよくなって最後は男に精液まで飲ませてしまった自分に何が言えるだろうか。
「クソッ」
顔を拭うと、男の吐き出した白濁がべっとりと手についた。決して好んで口にしたい味ではないが、なんとなく舌を伸ばしてぺちゃりと舐め取ってみる。
やっぱり青臭くて苦い味がした。
「淫乱ザメが」
その様子を見ていたザンザスが、吐き捨てるように罵る。
わざと見せ付けるように指先ですくい取ったそれをペロリと舐めてみせ、スクアーロはふんと鼻で笑ってやった。
「悪かったな。早漏ボス」
自ら地雷を踏む行為なのは分かっていたが、ついつい口にしたくなる衝動を止められなかった。
「…かっ消す」
案の定、ゴゴゴという地獄の門が開く音さえ聞こえてきそうなほど、ザンザスの表情が怒りで満ちる。
それを満足げに眺めながら、スクアーロは指に残った白濁を舌先に乗せた。
ぐっと身を乗りだし、舌を伸ばしたままザンザスに顔を寄せる。
「…おい」
淫猥な蜜にまみれた舌先で、男の唇をなぞる。前に覚えていたのと同じ、意外と柔らかなその感触になんとなくほっとした。
最後に一瞬かすめるようなキスを落とすと、スクアーロはパッと身を離して勝ち誇ったように笑った。
「ハッピーエンドのキスだ、オヒメサマよぉ!」
「……」
無言で全身に憤怒のオーラを纏い出したザンザスから逃げるように、ばさりと半透明のカーテンを開く。
「オレをかっ消したかったら、とっとと自分の足で立ち上がって来るんだなぁ!」
そういって立ち上がったスクアーロ自身、病み上がりの無理が祟って身体のあちこちが軋んでいたが、今はとてつもなく愉快な気分なのでろくに痛みも感じない。
「このオレから逃げられると思うな、ドカス」
「ハッ、上等だぁ!」
元から逃げる気なんてないが、ザンザスが自由に動けるようになったらこの百倍…いや、千倍くらいの復讐が待っていそうだった。
けど、それならそれでいいとさえ思えた。
「待ってるぜぇ、ボスさんよぉ!」
オレは8年待った。
ならあと数日くらい、待てないわけがないのだ。
獲物を追え、その足で。
息の根を止めろ、その炎で。
いつでもお前を待っている男が、ここにいる。
Fine.
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