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novel
白銀色の糸を切れ†


 絶え絶えに継ぐ自分の呼吸がやけに彼方に聞こえる。
 それは確かに自分の声なのに、あまりに淫猥で甘ったるい響きを帯びていて、まるで女みたいだと思うとぞっとした。
「う、あ゛…っ!」
 強靭なバネで下からずんと突き上げられて、スクアーロは長い銀髪を振り乱して仰け反った。角度が変わったせいでさっきとは別の場所を抉られ、がくりと腰が崩れ落ちそうになる。
「あっ、はぁっ、ザンザス…っ」
 その間もスクアーロを下から容赦なく突き上げている男には、一片の慈悲も期待出来ない。
 力の入らない腰に添えられた両手は日の当たらない滑らかな皮膚を辿るだけで、過ぎた快感に悶えるスクアーロの身体を支えようなどというつもりは毛頭ないのが明らかだ。
「…ク、ソッ…」
 仕方なく自分で身体を支えようと、伸ばした両腕を男の腹につく。手の平の下で逞しい腹筋が生々しく蠢いていて、最奥を捻じ伏せる突き上げが一層リアルに感じられた。
「…うぜえ」
「……え、っ?…んっ」
 不意に動きが止まり、ぼそりと漏れたザンザスの呟きが耳に届いて、スクアーロは反射的に男の顔を見た。
 年を重ねてますます精悍になった顔立ちが、鬱陶しそうにしかめられている。その視線の先を見て、スクアーロはああと気付いた。
 古い火傷の痕を、さらさらと揺れる細い銀糸が飾っている。
 長く伸びたスクアーロの髪先が、腰を跳ねさせる度ザンザスの腹をくすぐっていて、きっとそれが気に食わないのだろう。
「くっ、は……悪ィなぁ。いつの間にかこんなんなっちまってよぉ」
 わざとニタリと笑ってみせると、男が不愉快そうに眉をひそめて自分の腹に当たる銀髪をぐいと引っ掴んだ。
「お゛わっ!」
「いっそ頭ごと燃やして欲しいか、カスザメが」
 後ろは繋がったままスクアーロの身体がザンザスの胸に倒れ込むように引き倒される。間近に迫った男の顔はマグマのようにどろりとした怒りに満ちていて、いつまでも冷え固まることが無い。
 低く唸るような声を心地良くさえ聞きながら、スクアーロは男の胸に倒れ込んだまま自らゆらりと腰を回してやった。
「やってみろぉ、クソボスがぁ」
 後孔をぎっちり埋め尽くしていた男のものが更にどくりと膨れて、腹の奥の奥まで満たされた感じがする。指先に絡んだ銀糸をしばらく弄んでから、ザンザスはフンとつまらなそうに鼻を鳴らしてもう一度ぎりっと容赦なく引っ張った。
「ぃでっ!てめぇ…ハゲたらどーすんだぁ!」
「るせえ。その前にてめーのこの髪、オレがかっ切ってやる」
 もう興味はないとでも言うように放り出された銀髪が再びザンザスの身体の上を流れる。
 一瞬きょとんとしてから、スクアーロはニタリと口端を上げて笑った。
「たりめぇだぁ。オレだっていい加減うんざりしてんだ。さっさとしやがれクソボス」
「てめーは黙ってオレに従ってりゃいい」
「ん゛あぁっ!」
 がつっと腰骨が当たるくらい勢い良く突き上げられる。ぱさりと跳ね上がった長い銀髪が、窓から差し込む月光を受けて朧に輝いた。


 最強の炎の名の下に、野望を捨てた獣など集いはしない。
 ただ時間を刻んで虚空に佇むしかない銀月は、今夜もお前から与えられる無惨な死を待っている。


Fine.

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あきゅろす。
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