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novel
紅碧の嵐を起こせ2†
「ザン、ザ……う゛お゛あ゛ああああっ!」
 スクアーロが掠れた声を絞り出そうとした瞬間、今度は鋭く身を裂くような痛みが胸部を襲った。鮫に食われ、まだ肉色も鮮やかな傷の中でも、一際治りが遅い部分に男の指が突き立てられる。
「ぐ…が、…あ゛あっ…!」
 ぐりぐりと深く抉るように動かされると、開いた傷口から鮮血が溢れ出した。全身の毛穴からどっと汗が吹き出し、痛みに意識が飛びかける。
 ギリギリでそれを繋ぎ止めているのは、押し潰すような男の威圧感とスクアーロの血を沸き立たせる心地良い憤怒の感触だ。
「このオレがカス共の施しを受けると思ってやがるなら、てめーもここで殺してやる」
 その言葉が嘘ではないことを示すように、スクアーロの首筋を掴んだ男の手が容赦なく力を込めてくる。
 震える瞼を押し上げて、スクアーロは自分を見下ろす男の姿を見た。紅い瞳の奥で燃え盛る炎を見つけ、痙攣し始めた唇の端を無理矢理引き上げて、ニヤリと笑って見せる。
「…んなこと、オレが言うわけねぇだろぉ…、ボス」
 誰よりもこの男を知っているのは、他の誰でもない、自分なのだから。
「おととい来やがれクソ共が、っつって…一蹴してやったぜぇ…」
 切れ切れにそこまで言うと、首を締め上げていた力が少し緩んだ。
「一応オウカガイってのを立てただけだ。オレたちのボスは…お前だからな」
「……フン、カスが」
「うぐぁっ!」
 傷口を抉り立てていた指がようやく引き抜かれ、首から男の手が退かされる。急に大量の空気が肺へと流れ込んできて、スクアーロは何度も咳き込んだ。
「げほっ、ごほっ…この、クソボスがぁ…」
「黙れ、カスザメ」
 そのまま捨て置かれるかと思った身体を、無造作に男が掴む。
 スクアーロが問い返す間もなく仰向けにされ、逞しい両腕に脚を掴まれてズボンを引き下ろされる。邪魔なそれを脇に捨てると、股関節が軋むくらい左右に大きく開かされた。
「う゛お゛ぉい!まさかまだやる気かぁ!オレは痛ぇし苦しいしで、もう疲れ…」
「るせえっ」
「んあ゛ぁぁっ!」
 ついに指先で慣らすことさえなく、昂ぶったザンザス自身をたった一突きで奥まで捻じ込まれる。太い雁首を呑み込むときだけ後孔に痛みが走ったが、そこから先はずぶずぶと抵抗もせず、自ら歓迎するように襞が嬉しげに絡み付いてうねっているのが分かった。
「あ゛っ、んっ…はっ…ぁ…」
 馴染む間もなく抜き差しされても、掻き出しきれていなかった男の白濁が潤滑油代わりになっているのか、与えられるのは目も眩むような快感だけだ。
 持ち主の意に反して、主に従順過ぎる自分の身体が忌々しい。
「…ふっ、ん……ぁっ…」
 腹立ち紛れにスクアーロは両腕を剥きだしの男の背中に回した。ガクガクと揺さ振られながら確かこの辺だったとあたりをつけて、イイところを突かれ大きく喘いだ隙にぐっと爪を立ててやる。
「っ!」
 一瞬ザンザスの身体がびくりと反応して、詰めるような息が漏れた。どうやら狙い通り、スクアーロの立てた爪が背中の傷口を抉ったらしい。
「…はっ、あ……、くく…っ、ざまぁ、みろ…」
 さっきやられた仕返しだ。
「てめー…」
「お゛わぁっ!」
 思わず満足げにニヤリと漏れた笑みを男が見逃すはずもなく、叩きつけるような突き上げが一層激しいものに変わった。
「あっ、あ゛っ!…ぐっ!…う…っ!」
 息さえ吐かせぬ抜き差しに、摩擦熱に似た熱さが後壁から沸き上がって来る。同時にびりびりと皮膚を焼くザンザスの怒りの熱を感じ、スクアーロは別々の熱さを噛み締めるようにして快感に酔い痴れた。
 そうだ、お前はこれでいい。
 敗北の屈辱など記憶に留めて置く必要は無い。愚かに傷を舐め合うくらいなら爪を立てて鮮血を流せ。
 屈辱と痛みを怒りに変えて、オレの身体にもっと深く刻み込めばいい。
「おら、もっと感じろ、淫乱ザメ」
「う゛、あっ、あっ……っ、ザンザス…っ!」
 この身に流れているのが雨の波動なら、燃え盛る炎で蒸気を生み出せ。降り止まぬ豪雨に風を熾し、全てを切り裂く嵐に変えろ。
 それがオレの知る、ザンザスという男だ。


「う゛お゛ぉい!動くなっつってんだろ、包帯が巻きにくいじゃねぇかぁ!」
「巻く?てめーがやってんのは縛るってんだ、ド下手カスが」
「おまえが脇でごちゃごちゃ言うからだろうがぁ!」
「次にオレの首なんか絞めてみろ。一片の灰も残らずかっ消してやる」
「いいから黙って見てやがれ、このクソボスがぁぁっ!」


Fine.

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