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novel
猩々緋の背を燃やせ2†
「オレに向けて脚を開け」
「な゛っ!んなことしたら全部見え…」
「見っともなくおっ勃てたそこをオレに晒して、てめーで扱いてイってみせろ」
「っ!」
 なに考えてんだ、このクソボスは!
 全身で拒否したいと思いつつも、男にそう言われたら従うしかない。この男を主と定めて付いて行くと捧げた誓いは、細胞の一欠片にまで染み付いた習性だ。
 思いつく限りの罵倒を脳内で吐き出しつつ、力の入らない身体を叱咤して仰向けになる。
 半ばやけくそになってがばりと大きく脚を開くと、見下ろした両脚の間から男の顔が見えて更なる羞恥を掻き立てられた。
「さっさとやれ、ドカスが」
「…クソッ」
 悪態をついて渋々右手を自身に伸ばす。
「逆だ」
「あ゛?」
 何故かそこでストップが掛かって、スクアーロは訝しげに男を見た。目が合うと、ザンザスがニタリと嫌な感じに笑う。
「そこだけじゃ足んねぇだろ。右は後ろだ」
「な゛っ!」
 つまり左手で扱いて右手を後ろの孔に突っ込めということか。
 普通ならそれがどうしたと思うところだろうが、如何せんスクアーロの左手は義手だ。右のように自在に操れるわけじゃないし、動きも多少ぎこちない。
 勿論、男はそれを十分わかって言っているのだ。
「チッ、やりゃあいいんだろやりゃあ!」
 どうせならさっさと済ませてやろうと、スクアーロは革手袋に包まれた左手を自身に添え、揃えた3本の指を一気に奥まで突っ込んだ。
「うぐっ!」
 目一杯広げられた入り口が苦しいが、中はさっき注ぎ込まれたもの濡れているから痛みはない。
 腹側のイイところを探るよう指を出し入れし、左手を裏筋に擦り付けるようにして自身を扱きたてる。
「ん、く…っ、は、あ……」
 だがやはり義手の左手では思うように動かせない。届きそうで届かないもどかしさに苛立って乱暴に擦り立てると、ひりひりと花茎の表面が痛んだ。
「いっ……あっ、…ん、あっ…ふ」
 静かな寝室にスクアーロの喘ぎだけが響く。時折カランと氷の鳴る音がして、全身に突き刺さるような視線を感じた。
 舐めるように這い回る視線の愛撫が、触れていない皮膚の産毛まで粟立たせる。
 自身を扱いて得られる直接的な快感を諦め、奥をかき回す指と無音の愛撫にだけ意識を集中させたくて、スクアーロは目を閉じた。
 それに気付き、即座にザンザスの檄が飛ぶ。
「目は開けてろ」
「…や、無理……っ、これじゃイけな…っ」
「オレを見ろ、カスザメ」
「っ、んぅっ…」
 命じられて瞼を開き、スクアーロは吸い寄せられるようにザンザスの目を見つめた。
 いつもの怒りに燃えた紅色が一番好きだが、欲情に翳った男の瞳も、燃え滾る業火のようで嫌いじゃない。
 ザンザスの視線に煽られるように、動かす両手の動きが早くなる。男の動きを脳内で反芻して、腰が勝手にリズムを刻んだ。
「てめーを抱いてんのは、誰だ」
 そんなこと、今更聞く必要があるだろうか。
 この身体を思うままに操るのも、今触れている自分の指先でさえも、全部。
「ボ、ス…っ、…ザンザスっ!」
 お前のものだ。
 男の名を呼んだ瞬間、ギリギリまで高められていた熱が一気に破裂した。
 ぎゅうっと引き絞られた襞が指に絡み、どくりと吹き出した白濁が冷たい義手を濡らしていく。
「は…あ、…はぁっ……はぁっ…」
 スクアーロが肩で荒い息を繰り返していると、ぎしりと微かな音がして男が立ち上がったのが分かった。
 まだ何かされるのだろうかと期待とも不安ともつかない感情をよそに、ザンザスの背中はさっさと浴室へと消えてしまう。少ししてシャワーの音が聞こえてきたから、今日はようやくこれで解放されるのだろう。
 仰向けのまま高い天井を見上げながら、自身が吐き出したもので白く汚れた革手袋をシーツに擦り付ける。
 綺麗にベッドメイキングされていたはずのシーツは、あちこちにドロドロした液体と既に乾いた塊がこびり付いて見るも無惨な有様だった。
 誰だかは知らないが、明日このベッドを掃除する人間が少し気の毒に思えてきた。
「突っ込んで出すだけの孔、かぁ…」
 不意に言われたザンザスの言葉を思い出す。
 いかにも傍若無人傲岸不遜な、あの男らしいセリフだ。
「けどまぁ、今日のオレはあいつに『抱かれた』ってことになるのかぁ」
 さっきザンザス自身が言っていた言葉をそのまま信じるのなら。
 あの男が何を考えてあんな言葉を口にしたのかは分からないが、とりあえず今日の自分は『突っ込んで出すだけの孔』より多少マシな存在だったらしい。
「明日はどうなるか分かんねぇけどなぁ」
 自分で呟いてみたら、ククッと喉の奥から笑いが漏れた。
 女みたいに柔らかな胸もなくて、しっとり包みこんでやれるような子宮さえなくて、何一つ与えることが出来ない身体でも。
 あの男にとって、抱きたいと思われるくらいの何かがあるならそれでいい。
「もっとも、健気に待ってやるつもりは毛頭ねぇが」
 所詮これはただの余興。
 自分が惚れ込んだのは男の地位でも名誉でも、ましてやあの容姿でもないのだから。


 さあ、もっとオレを奮い立たせてくれ。
 おまえの燃え滾る怒りの炎で。
 その背中を追いかけるオレの肺までも、熱く爛れて焼け落ちちまうくらいに。


Fine.

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あきゅろす。
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