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novel
inizio/2011ボス誕ペーパーおまけ


 ぐいっと半ば押し付けるように差し出されたそれを見て、ザンザスは軽く目を見開いた。
 剣以外にはまるで興味のない子鮫の手に、名のあるブランドのロゴが型押しされた小さな箱が握られている。
 早く開けてみろと急かされるのが鬱陶しくて、ザンザスは促されるまま包装紙を破り捨てた。
 中から現れたのは一本の腕時計だ。シックなシルバーブラックのボディに繊細な銀細工がよく映えている。
「なんだこれは」
 まさか否定的な反応が返ってくるとは思ってもいなかったのだろう。スクアーロがきょとんと目を丸くして首を傾げる。
「何って、誕生日プレゼントだろぉ?あっ、もしかしてオレ間違えたか?お前が欲しかったのってこれじゃなかったか?」
 スクアーロの言う通り、それは確かに先日気まぐれに立ち寄ったショップでザンザスの目に留まった時計だった。だがそのことをこいつに言った覚えはないし、表情にも出さなかったはずだ。
「ドカスが。くだらねぇことしてんじゃねぇ」
 普通のガキには買えるはずもない、安物とは程遠い代物だ。ヴァリアーに入隊したばかりの子供に与えられる報酬など微々たる額のはずで、それすら使いどころがないと笑っていた金をこのために注ぎ込んだのかと思うと何故だか無性に腹が立った。
「誕生日なんかどうでもいい」
 10月10日はどこぞの誰とも知らぬ女が憤怒の悪鬼を産み落とした日。
 自分にとってはむしろ忌まわしく疎ましい一日でしかなく、祝いの言葉など以っての外だった。だがそれを口に出すことは出来ない。
 素っ気なく言い捨てると、どんな反応を期待していたものかスクアーロが目に見えてしゅんと肩を落とした。
 面倒だといわんばかりにチッと舌を打つと、慌てたように手を伸ばしてくる。
「悪かったなぁ。いらねぇならそれ、捨てとくから」
「あ?自分で使えばいいだろうが」
「オレには必要ねぇよ。そいつはお前のために選んだんだから」
 取り返そうと伸ばされた手を、ザンザスは邪魔臭そうにばしりと叩き落とした。
「そうだな。頭の悪いカスには不相応な品だ」
「っ、だから捨てるって言ってんだろぉ」
「うるせぇ。こいつはもうオレの物だ」
「さっきいらねぇって言ったじゃねぇか!」
「くだらねぇと言ったんだ、ドカスが」
 言いながらベルトを手首に回すと、時計はまるで最初からそこにあったかのようにしっくりとザンザスの手に馴染んだ。
「んだよ、ちくしょう…」
 むすっと頬を膨らませ悪態をつくスクアーロの顔がどこか嬉しそうにも見えて、ザンザスは時計を付けた方の腕を勢い良く振り降ろした。
「っでぇ゛!」
「フン」
 眦に涙を浮かべ、スクアーロが殴られた頭を押さえてうずくまる。
「…のやろう!覚えてろぉ!次は絶対Grazieって言わせてやるからなぁ!」
「ハッ、せいぜいやってみろ。そんな日は一生こねぇ」
 誕生日などというくだらない余興をやめる気がないのならば、好きにすればいい。
 永遠に聞けない言葉を待ちながら、その無価値な一生をかけて。


Fine.



全てはここから始まった(笑)
何をあげたら良いか分からないと困ることのできるスクアーロは、きっと幸せなんだと思うのです。


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あきゅろす。
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