novel
accetto/ボスの素朴な疑問
「てめーはどうやったら死ぬんだろうな」
「………………は?」
ぽかんと口を開けたまま、スクアーロは固まった。
それはいつもと変わらぬ任務報告の最中、ザンザスにつまらない言い掛かりを付けられたせいで軽い暴力と悪態と一方的な流血の応酬をし、無理矢理床に引き倒されて服を剥ぎ取られベッドへとなだれ込んだ一連のあれこれの後。
ねっとりと甘く気怠い疲労の中でうとうとしていたスクアーロの目を、一瞬で覚まさせる一言だった。
「いきなり何言い出すんだ、ボスさんよぉ…」
ひくひくと攣りそうになる唇でなんとか弧を描き、ぎこちない笑いを形作る。
「左手を切り落としても死なねぇ。鮫に喰われても死なねぇ。てめーのしぶとさには心底呆れる」
「そう言われてもなぁ…」
「今度死ぬときはオレの目の前で死ね。てめーがもがき苦しんで死ぬところを見てみてぇ。なんなら最期にトドメをさしてやる」
「う゛お゛ぉい!そのセリフはシャレにならねぇぞ、お前の場合!」
「不満か?」
「いや」
真顔で即答したスクアーロに、ザンザスがくつくつと笑う。したり顔の満足げな紅瞳を、スクアーロはどこか腑に落ちないという顔で睨み上げた。
「ンのクソボスが!…勝手にしろぉ。どうせオレはお前より先に死ぬと決めてるんだ」
「フン、だろうな」
今更言われるまでもないと言いたげなザンザスの声に、スクアーロはチッと悔しげに舌打ちを返した。
死など恐ろしくはない。ただ、いつか必ず訪れるそのときに、この男の側で剣を振っていればそれでいい。
いつか。
そのいつかのときが来たら。
見えぬ眼球を抉り出し、震えぬ鼓膜が破れるほどに名を注いで。
冷たくなった身体を骨のかけら髪の一本まで焼き尽くし、形も残らないくらい粉々にして。
そうしてようやく、男は彼の死をしるのだろう。
Fine.
そうでもしないと、ボスはきっと受け入れられない。
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