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novel
sette peccati mortali/ベルとバイパー


 宙に浮く赤ん坊なんて初めて見た。
 ふわふわと目の前を漂うそれを物珍しそうに見つめ、ベルは新しい玩具を手に入れるべく細い腕を伸ばした。だが思ったより動きの早い玩具はひょいと容易くベルの手を避け、更に高いところへと逃げていってしまう。
「まったく、だから子供ってやつは嫌いなんだ」
 苦々しい声は赤ん坊の口から紡がれたものだろうか。小さな三角形がますます不快そうに歪み、容姿に似合わない台詞を吐く。
「自分なんて赤ん坊じゃん」
 つまらなそうに唇を尖らせ、ベルは伸ばした手を引っ込めた。
「少なくとも今の君よりは大人だよ」
 フンと見下すような笑い方に腹が立つ。そもそも王子を上から見るなんて不遜も甚だしいではないか。風船のように浮かぶそれをどうやって引き摺り下ろそうか考えていると、赤ん坊がまたもや生意気な口をきいた。
「さあ、面倒な仕事はさっさと済ませよう。僕の時間は金になるんだ」
 そう言って小さな手でメモ用紙とペンを握る。
「一応自己紹介だけしておこうか。僕はバイパー。これから君の同僚ってことになる」
「ちぇっ、最年少幹部は王子だと思ったのに」
「それは悪かったね。僕が受けた今日の仕事は君のスキルを把握すること。戦闘能力の高さは君がここへ来て殺した部下の数で証明済みだけど、ヴァリアーはただの暗殺部隊じゃないからね」
「なあ、オレいいこと思いついた。いっそお前も死んじゃえばいいんじゃね?」
「こっちの調べでは語学力と暗殺能力には問題なし。まずはその辺りからテストさせて貰うよ」
「無視すんなクソガキ」
「それと本部内での大量虐殺は禁止だ。ある程度の人数は残しておかないと仕事に差し支えるからね」
「…やっぱお前今すぐ殺す」
「あとはスクアーロが聞いておけって…なんだいこれは、好きな食べ物と嫌いな食べ物?小学生のプロフィールでもあるまいし」
「……」
「とにかく、実際僕を除いて子供は君だけだ。他の連中も扱いかねてるんだよ。年が近いから話しやすいだろうなんて理由で今回は僕が選ばれたけど、正直君の好き嫌いなんて僕にはどうでもいい」
 どこにあるのかも解らない肩を竦め、赤ん坊が面倒臭そうに言い捨てる。むすっと口を引き結んだまま、ベルはいつあのフードにナイフを突き立ててやろうかタイミングを見計らっていた。
「…ベル、Belphegor…Acedia」
 後ろ手に取り出したナイフを今にも投げようとした瞬間、赤ん坊がぼそぼそと何かを呟き出す。
「怠惰のベルフェゴール。いい名前じゃないか」
「…あ?」
「ここには嫉妬に猛る怪物も、憤怒を操る王もいる。ちょうどいい、僕は強欲を貰うよ」
「いきなり喋り出して訳わかんねーし。バイパー、だっけ?何言ってんのお前」
「違う。今日から僕はマーモンだ」
「はああ?」
 一体何がそんなに面白いのか、服の裾をひらりとそよがせ、マーモンだかバイパーだか解らない赤ん坊が愉快そうに身体を揺らす。
「改めて自己紹介しよう。僕はマーモン、強欲のマーモンだ。君のお陰で新しい名前が出来たよ、怠惰のベルフェゴール」
「…マジ意味わかんねー」
 だが、君のせいではなく、君のお陰と言われるのはなんだか悪くない。
 ついでのようにちょこんと差し出された小さな手を、ベルは三本の指で掴んだ。思いがけず柔らかい感触に内心驚きつつも、ニタリと悪戯っぽく唇を引き上げて見せる。
「つーか、他のやつらにも付けんの?その変な名前」
「他のって、幹部たちのことかい?さあね、あとは君の好きにすればいいさ」
「憤怒と嫉妬は決まってんだっけ。残ってんのは暴食と色欲と…」
「傲慢」
「しししっ。どれも面白そうじゃん」
「やれやれ、入隊早々殺されない程度にしておくことだね」
「かんけーないね。だってオレ王子だもん」
 得意げに胸をそらして笑いながら、ベルフェゴールは隠していたナイフをこっそりしまった。
 このマーモンと一緒にいれば、まだ少しは楽しめそうだ。
 勝手に名前を付けられた嫉妬と色欲と傲慢がどんな反応をするかは、また別の話。


Fine.



捏造しまくりですみませんでした…!



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あきゅろす。
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