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novel
promessa/(ザン)スク


 例えば夜中にふと目が覚めて。
 痛む腰に滲む涙を堪えつつとうに冷えた傍らのシーツを睨み下ろし、「あのクソボス一晩中好き放題しやがって覚えてやがれコノヤロウ」と呪詛を吐くことは日常茶飯事だ。
 だが、さらに上げた視線の先に殴り書きとはいえ伝言メモなんてものが残されているとなると、それは滅多にないどころか希少かつプレミアかつ、まず普通に考えて有り得ない出来事だった。
 その奇跡の結晶みたいな紙の切れ端を、スクアーロは恐る恐る爪の先でつまみ上げた。一見すると乱雑な文字の羅列は、実は筆圧が高いだけで意外なほどに達筆だ。
 たった数個しかない単語を噛み締めるように読んでしまうと、スクアーロは反射的にパタリとメモを裏返した。
「…なんだぁ?今の」
 無駄な瞬きを繰り返すこと10秒。気を取り直し、もう一度めくる。
 書いてある文字は変わらない。
 当然だ。だがそれが問題だった。
「『オレが戻るまでここにいろ』」
 試しに声に出して読んでみる。違う場所で区切ったら別の意味になるとかそういう展開を期待してみたが、残念ながら違うらしい。
 ならばこれは書いてあるそのままの意味に解釈すべきであって何かの呪文だとか暗号だとかそういう可能性もないわけで結局のところつまり。
「…『ここにいろ』ってことかぁ?」
 書き殴られた数語の言葉に深い意味などない。
 憂さ晴らしに付き合わせるためとか、まだヤり足りなかったからとか、あの男が考えそうな理由はいくらでも思いつく。だが、それでも。
「お前からこんな言葉を聞く日が来るとはなぁ」
 乾いたインクを指でなぞり、スクアーロは吐息だけで小さく笑った。
 誰の心も信じず、誰の存在も寄せ付けず。
 ただ独り世界を見下ろす男が寄越した、それは数時間先にある、再会の約束。


Fine.



例えどんな形でも、ボスがスクの存在を認めるってのは凄い進歩だと思うのです。


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