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novel
天色の牙を剥け2†
「わざわざ答えてやる必要があんのか?この部屋でやることは一つだ」
「はぁ゛っ?オレが何した…って、う゛お゛ぉい!そこで服を脱がすなぁ!」
 男の目的に気付いた時には既に手遅れで、おろしたての隊服は無惨にも引き裂かれた後だった。弾け飛んだ襟元のボタンが虚しく床を転がり、コロコロと視界から消えていく。
 そのまま下肢までひん剥かれそうになって、スクアーロはさすがに焦って抵抗した。
「ちょっ、待て、ザンザス!」
 ベルトに掛けられた男の手を押さえ、狭い拷問台の上でずりずりと腰を引く。
「てめー、オレに逆らう気か?」
 ギロリと斬れ味の良さそうな三白眼に睨み据えられ、どす黒い不機嫌オーラを纏った声音に危うく怯みかける。だがここで負けたら一貫の終わりと、スクアーロは矢継ぎ早に言を繋いだ。
「そんなんじゃねぇ!けど、ここではやめろ!ヤるならせめて上の寝室で…」
 とそこまで言いかけ、急に込み上げてきた気恥ずかしさに口を閉ざす。自身の言葉を脳内で反芻してみれば、カッと沸き上がる羞恥で頬が焼けた。
 なんだ、この生娘みたいなセリフは。
 今更場所を選ぶような関係でもあるまいし、拒むにしたって他に言いようがあるだろう。
 甚だしく不本意ではあるが、この男の気が向いた時、好きな場所で好きなように開かれてきた身体は、どんな状況だろうと極上の快感を得られるよう調教済だった。
 そもそも、自分のしたいようにするのがザンザスのザンザスたる由縁であって、本気で逆らうなど労力の無駄以外の何物でもない。
 暴君本人もそう思ったのか、ニヤリと口端を上げスクアーロの提案を鼻先で一蹴した。
「他に言いてぇことはあるか?」
「…あ、…アーロたちが見てるだろうがぁ!」
 これもまた、口にした途端になんとも言えぬ居た堪れなさを味わう羽目になった。
「う゛ぉ…、ぉー…」
 自身の言葉に懊悩するスクアーロをさらりと無視し、ザンザスは拷問台の傍らにじっと控える忠臣と、鋭い牙を剥き出しにして落ち着きなく尾鰭を揺らしている猛敵を一瞥した。
 そして、さもくだらないと言わんばかりに嘲笑する。
「ハッ、てめーは物に見られて欲情すんのか」
「な゛っ!物ってお前、こいつらは…」
「匣兵器だ」
「っ、けどアーロは、」
「黙れ」
 突然氷点下まで落ち込んだ語気に、スクアーロはぐっと唇を引き結んだ。
 乱暴にベルトを引き抜かれ、下肢を露わにされても抵抗も出来ないほどに、見上げたザンザスの表情は酷薄だった。
「身の程知らずのカスザメが。まだ解らねぇなら思い知らせてやる」
「な、にを…」
 疑問を質す暇さえ与えられず、抱え上げた両脚を胸につくほど折り曲げられる。後孔に押し当てられた昂ぶりの熱さに、スクアーロはザッと血の気が引く音を聞いた。
「お、おい待て、せめて濡らしてから……い゛っ!…つぅ!」
 あえかな抗議も虚しく、先走りを数度塗り付けられただけのそこに男の剛直が突き立てられた。慎ましく閉じた隘路を引き裂き、逞しい肉塊がごりごりと突き進んでくる。
「ひ…、あ……あ゛うっ!」
 乾いたそこにいきなり巨大な肉棒を突っ込むのだから、摩擦も抵抗もいつもの比ではない。きつい締め付けにあったザンザスが苛立たしげに腰を揺すり上げる度、下の方でめりっと嫌な音がした。
「力を抜け、ドカス」
「無理…に、決まっ…てんだろう、がぁっ!」
 痛みに噛み締めそうになる唇を大きく喘いで解き、はっはっと短く息を繋ぐ。面倒臭そうに舌打ちしたザンザスが、いつの間にか勃ち上がっていたスクアーロ自身を戯れに扱き出すと、鼻にかかった違う喘ぎが漏れた。
「んあっ…、ふ」
 持ち主がこんな目に遭わされているというのに、節操なしの雄蕊は気持ち良さそうにふるりと震え、だらしなく涎を垂らし始めている。開ききった先端の穴を鋭い爪先でカリカリと掻かれると、あまりの心地好さに髪の先まで痺れた。
「はぁ…ん…、…ひぅ゛っ!」
 快感に内壁が緩む隙を狙ってようやく根本まで埋めきったらしいザンザスが、馴染むのも待たず腰を突き上げてくる。
「やっ、待…ぁっ、あ、あ…」
 上から体重を掛けるようにがつがつと串刺しにされて、スクアーロは無意識に男の胸を押し退けるように腕を突っ張らせていた。それを片手で纏めて掴み、ザンザスが無理矢理スクアーロの身体を引き起こす。
「ひっ…、あ゛あ゛あああっ!」
 深々と雄芯を埋め込んだまま、向かい合っていた体勢をぐるりと回転させられて、スクアーロは劈くような悲鳴を上げた。自身の体重のせいで長大な凶器が最奥を抉り、引き攣れた襞口に豊かな叢の感触が触れる。
 込み上げる惨めさをよそに、むごく掻き回された内壁はざわざわと勝手に蠢き出し、再び男の肉棒に絡み付いていった。ぴっちり吸い付くように引き締まった内壁から、太く張り出した先端の形まで感じ取れる。締め付けたそれがどくりと脈打って、スクアーロは堪らずにぎゅっと目を瞑った。
「前を見ろ」
 それを許さないザンザスの声が、ぴちゃりと耳朶を濡らす。促すように舌を差し込まれて、スクアーロは嫌々ながら目を開けた。
 そして、見た。
 威風堂々とした白き百獣の王と、苛々と青炎を散らす愛鮫の姿を。
「な゛っ!お前ら…っ」
「目を逸らすな」
 動揺するスクアーロに、紅瞳の悪魔がおぞましいほど優しく囁きかける。ゆさっと軽く腰を揺らされただけで、喉奥から淫らな喘ぎを引き出された。
「ふぁっ…や、めろぉ…っ!」
「何を恥ずかしがる必要がある。こいつらはただの物だろうが」
「ちが、んっ、あ…あ゛っ」
 拷問台に体重を預けるようにして、ザンザスがスクアーロの身体を抱え直す。せめてみっともなく濡れそぼった前だけは隠そうとすると、逆に閉じかけた両脚を限界まで割り開かれた。脚の付け根に腱が浮き、白く滑らかな内股があらわになる。
「どうせ理解なんて出来やしねぇ。存分にてめーの淫乱っぷりを見せつけてやれ」
 クッと馬鹿にするように笑ったザンザスが、繋がった場所を見せ付けるようにねっとりと腰を回してくる。赤黒く脹れた怒張を呑み込み、擦れて捲れ上がった襞の生々しさまでが目に見えるようだった。
 意識すればするほど、認め難い被虐の悦びが沸き上がってくる。酷く虐げられたはずの柔襞がくちゅっとねだるように窄まったのが分かり、スクアーロは低く呻いた。
「…っ、アー、ロ…もどれぇ…」
 じっと物言いたげな愛鮫の視線に耐え切れず、スクアーロは匣を取り出そうと懐に手を伸ばした。
「ドカスが。そんなこと誰が許可した」
 震える指でようやく掴んだものの、背後から伸びてきたザンザスの手にあっさり叩き落とされる。
「ぅ、あ…っ!」
 浅知恵を働かせた仕置きのように、後ろ手に両腕を拘束し、胸を突き出すような格好にさせられた。触れられもしないのにぷくりと立ち上がった尖りが目に入って、スクアーロは諦めたように肩を落とした。
「くそ…っ、も…好きに、しやがれぇ…」
「フン、言われなくともそうする」
 ふっと満足そうな吐息を吐き出したザンザスが、動きやすいようスクアーロの腰を固定させる。太く張り出した亀頭が前立腺の膨らみを捕らえ、淫靡な期待に背筋が震えた。
「あ゛ぅっ、あ…っ、あ…あ!」
 突き上げの度に腰を沈めさせられ、有り得ない深みまで容赦なく抉られても、痛みはすぐさま快感に変わる。安っぽい矜持だけでは耐え切れなくなり、気持ちいいところを擦り付けるようにして次第に腰が揺れ始めた。
「あ…、や、ちが…ぁっ、ボス…っ!」
「どうした、ドカス」
「だめ…だっ、こんな…ぁ」
「はっきり言え。欲しいんだろうが、ここに」
「んあ゛っ!そこ…っ、そこ…ぁ、もっと…!」
 その日珍しく饒舌だったザンザスは、何故かスクアーロ自身から淫猥な言葉を引き出そうとしているようだった。どこが一番敏感に感じ、中の襞々がどれほど浅ましく雄蕊を貪っているか、微に入り細に入り説明させられる。
 だが半ば意識を飛ばしかけているスクアーロには、自分が何を口走っているかなど解るはずもなかった。
 焦らしに焦らされた場所をひときわ強く抉られ、細長い声を上げて白濁を噴き上げる。
「てめぇがどれほど逆らおうと、これはオレの…」
 達すると同時に気絶したスクアーロの耳には、そう言って笑う男の声もついに届かなかった。


 もうすぐここへ奴がやってくる。
 吃驚と歓喜の声を上げ、あの扉をぶち破って喧しく騒ぎ始める。
 靡く銀髪の傍らに、新たな成長を遂げた愛鮫を従えて。

 足音が、聞こえる。


Fine.


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