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novel
おまけ†


 ぴちゃりと舌を閃かせると、押さえつけた痩躯が面白いくらいにびくりと跳ねた。血の滲んだ鎖骨の窪みから、ゆっくりと汗が伝い落ちていくのが見える。ずっぷりと付け根まで差し込んだ親指を左右に開くと、伸び切った薄い皮膚が更に限界まで張り詰め、慈悲を乞うようにか細く震えた。
「ザン、ザス…っ。も、むりだ…裂ける…っ」
 男の肩を押し退けるように腕を突っ張らせていたスクアーロが、あらぬ場所を切り裂かれる恐怖に頬をそそけだたせる。ぐちゅぐちゅと惨いくらいに中を掻き回し、ザンザスは満足そうに喉奥で笑った。
「フン、なら施しをくれてやる。よく見てろドカス」
「…え?」
 不思議そうに目を瞬かせたスクアーロに見せ付けるように、ザンザスは伸ばした舌先をゆっくりと近付けた。途中でその目的に気付いたのか、スクアーロが零れ落ちそうなほど目を見開く。汗ばんだ首筋がさあっと淡い鴇色に染まった。
「う、そだろ…。待っ、あ、あ…ひあああっ!」
 情けなく声を上げスクアーロが仰け反る。胸元に付くほど脚を折り曲げさせ赤く熟れた蕾にぐっと舌を潜り込ませると、抱え込んだ腰が引き攣ったように痙攣し始めた。快感と羞恥と衝撃と、あまりのショックに身体が耐えられなくなったのだろう。
 当然だ。男の秘部に口をつけるなど不快以外の何物でもない。自分が突っ込むために濡らすのなら、ローションのボトルごとぶち込んで一気に絞り出すほうが楽で良い。
「やぁ…ふ、うぅぅ…っ!」
 打ち上げられた魚のように無様に身体を跳ねさせているスクアーロを上目遣いに見下ろし、ザンザスは尖らせた舌先を一層深く突き入れた。口端から涎さえ零し、はっはっと短い息を繋ぐスクアーロは過ぎた快感に気を飛ばしかけているらしい。
 知ったことか。何もかも、こいつの自業自得だ。
 そもそもドカスの分際で任務の途中で寄り道などするから悪い。更にはこの自分に無駄な手間を取らせ、普段物になど執着しないくせにたかがグラスに現を抜かした挙句、安物の赤いグラスを…赤い色を、綺麗だなどと抜かすから。
 だからこそ、自分があんな気紛れを起こす羽目になった。
 昨日帰還するなり戸棚の奥に放り込んだ包みに思いを馳せ、ザンザスはうんざりしたように眉を寄せた。イラッとしたついでにスクアーロの胸元へと手を伸ばし、ぷくりと立ち上がった尖りを思いきり捻り潰してやる。
 濡れ滴る後ろの快感に酔い痴れていたスクアーロは、ぎゃあと絞り出すような悲鳴を上げた。涙の滲んだ眦に少しだけ溜飲を下げる。
 透く赤色が影を纏って深みを増すのなら、澄んだ白色は光を宿して銀色に輝く。
 自分はその白の方が良いと、何故あんなことを思ったのだろう。
 顔を上げて濡れた口元を拭い、ザンザスは暖炉上の時計に目をやった。
 日付が変わるまであと1時間ある。
 しつこく纏わり付いて離れない不愉快さの代償に、その報いを受けさせてやろう。
 今日この日、生まれてきたことを後悔するくらいに。


Fine.


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